中高生にも分かる数学

他のサイトでよくある「数式で一般化した美しい数学」より「例題から理解してもらう親しみやすい数学」を目指しています。

エルデスシュトラウスの予想を証明!③(解形式パート2)

今回はパート3ということで前回に引き続きエルデスシュトラウスの予想の「解形式」について解説していきます。
さて、前回のおさらいから入りましょう。二つの解形式はこのように書けるということでした。

 (x,y,z)=(nα,β,γ)...(*)
 (x,y,z)=(n^{t}α,n^{t}β,γ)...(**)

ではこの定義したα,β,γは一体どのような関係性を持つのでしょうか?さすがに関係性などはなく、これ以上解に秩序を見出すことはできないのでしょうか?
結論から言えばそれはNOです。合同式を用いればさらに解の構造を明らかにすることができます。

前回ではnを法とする(nで割ったときのあまりを考える)合同式を考えていましたが、今回はα,β,γに対する合同式をそれぞれ考えます。
早速やってみましょう。

エルデスシュトラウスの予想が成立するならば、

 4xyz = n(xy+yz+zx)(通分して分母をはらう)

であり、これに(*)を代入すると、

 4nαβγ = n(nαβ+βγ+nγα)
 4αβγ = nαβ+βγ+nγα...(式①)

となります。ここで式①のαを法とする両辺の合同式をとると、αを含む項のあまりは0となるので(αで割り切れる)

 βγ ≡ 0(modα)...(式1)

となることが分かりますね?では式①でβを法とする両辺の合同式とるとどうなるでしょうか?

もちろんβを含む項は0となるので式は

 nγα ≡ 0(modβ)となるはずですね。でもこの式はもう少しだけ簡単にできます。

前回も述べましたがα,β,γはnと互いに素な自然数としているので(n,β)=1ですね。このようにnとβは明らかに互いに素なので式は単純に

 γα ≡ 0(modβ)...(式2)

と書くことができます。これはなぜなのか、例を挙げて説明してみましょう。
kを自然数として次のような合同式を考えてみます。

 5k ≡ 0(mod3)

このとき、5kが3で割り切れるかどうかには、5は全く無関係であることが分かります。kが3の倍数ならこの合同式は成立するし、kが3の倍数でないならこの合同式は成立しません。よって単純に

 k ≡ 0(mod3)

と書くことができるのです。では、この場合ではどうでしょう。

 6k ≡ 0(mod4)

このとき6kが4で割り切れるかどうかに、6は関係ないでしょうか?単純に

 k ≡ 0(mod4)

と書き換えることはできるでしょうか?
いえ、できません。例えば上の式ではkが2のとき成り立ちますが、下の式では成り立ちません。上の式の意味と下の式の意味は少し異なるのです。では上の式はどのように書き換えることができるでしょうか?

上の式で無関係なのは6の素因数に含まれる3です。これを無視すると、式は

 2k ≡ 0(mod4)

と書けます。これは確かめてもらうとわかりますが、式の意味を変化させない正しい変形です。もっと簡単に変形すると、

 k ≡ 0(mod2)

となりますが...。まあ、これはいいとして次のことが正しいと考えられますね。

「法とする数と互いに素な数は右辺が0の合同式においては消去することができる」

というわけで、式2が得られるのです!では同様にγを法とする両辺の合同式とると、

 nαβ ≡ 0(modγ)

 αβ ≡ 0(modγ)...(式3)

となるはずですよね!式1~3をあつめるとこんな感じになってます。


βγ ≡ 0(modα)

γα ≡ 0(modβ)

αβ ≡ 0(modγ)

これはなかなかきれいな式ですよね。これを解くことでα,β,γの関係性を見つけ出すことができます!!
ですが、みなさんまだ待ってください、(**)の解形式を忘れてませんか??(*)はこんなきれいな式になりましたが、(**)はこうなるとは限りません。ちょっと(**)の解形式のときも確かめてみましょう。

エルデスシュトラウスの予想が成立するならば、

 4xyz = n(xy+yz+zx)

であり、これに(**)を代入すると、

 4n^{2t}αβγ = n^{t+1}(n^{t}αβ+βγ+γα)

 4n^{t-1}αβγ = n^{t}αβ+βγ+γα...(式②)

となります。ここで式②のαを法とする両辺の合同式をとると、αを含む項は0となり(もう何回もやっているのでわかりますね?)

 βγ ≡ 0(modα)...(式4)

となります。これは、式1と全く同じですよね。では続けて式②でβを法とする両辺の合同式とってみましょう。

βを含む項は0となるので式は、

 γα ≡ 0(modβ)...(式5)

となります。これも式2と全く同じ式ですね!もしかすると、式6も式3と同じになるかもしれません!
式②のγを法とする両辺の合同式(γで割ったあまりを考えます。忘れてませんよね!)をとってみましょう。

 n^{t}αβ ≡ 0(modγ)

となりますよね。(γを含む項は0です!)ここで先ほど用いたこの事実を思い出してみましょう。

「法とする数と互いに素な数は右辺が0の合同式においては消去することができる」

このことを考えると(n,γ)=1なので(nt,γ)=1となりますから(互いに素な数は片方を何乗したとしても互いに素なことは変わらないですよね。)さらに式を簡単に書くとするなら、

 αβ ≡ 0(modγ)...(式6)

という感じで、めでたく式6も式3と同じ式になりました。これによって次のようなことがわかるのです。

「解形式(*),(**)においてα,β,γの関係性はどちらも同じである」

これはなかなか面白い事実ですよね。
でも関係性が同じだから何?と思う人もいるかもしれません。しかし関係性が同等であれば、解は同じ形で書くことができるという利点があるのです。
今はまだよく分からないかもしれませんが、今後必ずちゃんとした説明をしたいと思います!

ところで、


βγ ≡ 0(modα)...(式1)

γα ≡ 0(modβ)...(式2)

αβ ≡ 0(modγ)...(式3)

という連立の合同式が得られましたがこれはどのように解くことができるのでしょうか?
まず焦らず式をよく見てみましょう。一つ気づくことがあると思います。たぶん誰でも簡単に気づけると思います。

「3つ式があるが、よくみるとすべて同じ形をしていて文字だけが入れ替わっている」

言われてみるとそうだね、って感じですかね。でもこれに気付ければ、たった1つの式を解くだけで3つすべての解が見えちゃうんですよ。

まず、一番上の式1

 βγ ≡ 0(modα)...(式1)

から考えてみましょう。実は合同式を方程式に変える方法があります。その方法を使って説明してみたいと思います。
ではまず式1を言葉に直してみましょう。難しいですか??私ならこんな風に直すと思います。
「βγはαで割り切れる(あまりが0である)」
もっと端的に言い換えると??
「βγはαの倍数である」
こう言い換えることができそうですよね?これは方程式(等号=を用いた表現)で表すことができて、ある自然数Kを用いれば

 βγ = Kα...(式7)

と表せるはずです。では、ここでこんなことを考えてみます。

「α,β,γのうちαだけがもつ因数dがある」

このとき式7には矛盾が生じてしまいます。これを思い出してみましょう。

「ある数で割ったときのあまりが両辺で絶対に等しくならないときに、その方程式には矛盾がある」

では式7の両辺をdで割ったときのあまりについて考えてみましょう。(dを法とする合同式を考えるということ)
このとき右辺はαがdを因数に持つので、もちろんdの倍数、すなわちdで割るとあまりは必ず0であることがわかります。では左辺はどうでしょう。dはαだけがもつ因数のはずでしたのでdはβ,γと互いに素すなわち(β,d)=(γ,d)=1となります。よって右辺であるβγはdの倍数とはなりません。すなわちdで割ったときあまりは必ず0にはなりません。これは合同式で書くと、

 βγ ≢ Kα(mod d)

すなわちこの方程式は矛盾を含んでいるので

 βγ ≠ Kα

となるわけで、「αだけがもつ因数はない」すなわち「αがもつ因数はすべてβかγがもっている」という事実が得られます。そして思い出してみてください。3つの式は文字を入れ替えただけで式の形はすべて同じでしたよね?ということは...。文字を入れ替えただけの全く同じ文章が書けるのです。

「αがもつ因数はすべてβかγがもっている」
「βがもつ因数はすべてγかαがもっている」
「γがもつ因数はすべてαかβがもっている」

ほらだんだんα,β,γの関係が見えてきましたよね!
おっと、これ以上書きすぎるとブログが長くなりすぎるので今回はこれで終わりにします。
次回は解形式の最終回、ついに解の形式を完全に解き明かしたいと思います!ではお楽しみに。

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