中高生にも分かる数学

他のサイトでよくある「数式で一般化した美しい数学」より「例題から理解してもらう親しみやすい数学」を目指しています。

ペル方程式と魔法の数⁉|面白い方程式の話

【対象年次:中学三年~】

みなさんこんにちは!
中高生にも分かる数学のお時間です。

今回は面白い方程式についての話をしたいと思います!
「方程式なんてどれも面白くねーよ!」と言われてしまえばそれまでですが、できるだけ頑張って面白く話しますので最後までお付き合いくださいね。

今回紹介したい方程式はこれです。

 x^{2}-2y^{2}=1 (x,yは整数)

この方程式は解(x,y)が整数で最大次数が2なので、2次の不定方程式です。
用語がよく分からない人のために解説すると、「不定方程式」とは一般的に

”方程式の個数”が”未知数の個数”より少ないような方程式

のことです。
今回の方程式も例にもれず、方程式の個数1つに対して、未知数はx,yと2つありますので不定方程式と言えると思います。
そして不定方程式は多くの場合、無限に解を持ちます
この解の個数が〇個、と定められない性質から「不定方程式」と呼ばれるのです。ひええ…

では、この方程式 x^{2}-2y^{2}=1を解くにはどうしたらいいでしょうか?
いきなり言われても中々に難しいですよね…
というわけでまずは1次の不定方程式の解き方をおさらいしてみましょう。

1次不定方程式の解法:
例題として
 5x+6=3y-7 (x,yは整数)
を解くことを考えてみましょう。まず最初にするべきことは移項によって方程式を簡単にすることですね。普通の1次方程式と同じです。

 5x+13=3y

そして特殊解という1つの解を見つける必要があるのでした。
難しいことを言っているようですが、実際にはxに何を代入すれば3の倍数(右辺も3の倍数ですよね)になるのかを調べるだけなのです。
ここでx=1を代入すれば左辺の値は18になりますよね?これは3の倍数なのでこのxでオッケーということです(右辺も3の倍数だからです)。
そしてy=6とすれば右辺も18となるわけです。式で書くならば、

 5×1+13=3×6

ということです。
ここで特殊解 (x_0,y_0)=(1,6)がわかりましたが、ここから一般解を求めます。
少し形式的ですが、手法としては
「yにかかっている係数(ここでは3です)をmにつけて最後にx_0を足す」ということをします。
具体的にやってみましょうか。

 x=3m+1

同様にyにも
「xにかかっている係数(ここでは5です)をmにつけて最後にy_0を足す」ということをしてみましょう。

 y=5m+6

よってこれが一般解となるわけです。
このmにどんな整数を代入しても、それで得られた x,yは方程式 5x+13=3yを満たしていることになります!

 x=3m+1,y=5m+6 (mは整数)

また、例題以外に解を持たない1次不定方程式というものも存在しますが今回は割愛させていただきます。

このように1次不定方程式は比較的簡単に解くことができますが、2次の不定方程式はどうやって解けばいいのでしょうか。
一般的に2次の不定方程式を解くことは昔の数学者たちも苦労していたようです。2乗のせいで先ほどのような方法が使えないからです。

では本題には本題に入っていきましょう。
実はこのような特殊な形の方程式には面白い解の性質があるのです。
 x^{2}-2y^{2}=1

まず誰もが簡単に見つけられる解があります。
 y=0としてみてください。このとき x=1,-1という整数解が簡単に見つかるのがわかります。
これは一般的に"自明な解"と呼ばれます。確かに言われれば明らかにわかりますよね。

自明な解は (x_0,y_0)=(1,0),(-1,0)である。

明らかな解がわかったところで、一般解を求める準備に入りましょう。
準備としてすべきことは、1次不定方程式のときのように特殊解を求めてみることです(特殊解を求めるということは、方程式を満たす解のうち最も簡単に見つかる=最も小さいものを見つけることですね)。
今回は特殊解を x=x_1,y=y_1とすることにします。このとき、
 3^{2}-2×2^{2}=1であることから
 (x_1,y_1)=(3,2)が特殊解であることがわかります。
※小さい自然数から試しただけです。大きい自然数の特殊解を見つけるのは難しいです。

ここで以下のような魔法の無理数( \sqrt{}を含む数のこと)を考えます。

 3+2\sqrt{2}...(魔法の数)

これはどうやって導いたかというと、 x_1=3を左に y_1=2を右に書いて y_1=2にはもともと y^{2}の係数だった2平方根である \sqrt{2}を掛けることで作りました。
頭がいい人ならもしかすると 3^{2}-2×2^{2}=(3+2\sqrt{2})(3-2\sqrt{2})因数分解することで現れる数だと気づくかもしれません。

そしてこの魔法の数を2乗してみます。

 (3+2\sqrt{2})^{2}=9+12\sqrt{2}+8=17+12\sqrt{2}

さて今から魔法のようなことが起きます。
ここで、
 17^{2}-2×12^{2}
を計算してみましょう。結果はどうなりましたか?

ちゃんと計算が合っていれば1になるはずです!ということは17および12は方程式

 x^{2}-2y^{2}=1の新しい解になっていることがわかります!
すなわち次の解を x_2,y_2とすると、

 (x_2,y_2)=(17,12)となります。

なんか、すごいですよね。魔法の数を使えば解がすぐにわかっちゃいました。調子に乗って魔法の数を3乗してみましょう。

 (3+2\sqrt{2})^{3}=27+54\sqrt{2}+72+16\sqrt{2}=99+70\sqrt{2}

 99^{2}-2×70^{2}を計算するとやっぱり1になりますよね。じゃあこれは、3番目の解になりますね!

 (x_3,y_3)=(99,70)

実際に x^{2}-2y^{2}=1の解は魔法の数 (3+2\sqrt{2})をべき乗(1,2,3,...乗)することで見つけることができます。その性質を知っていれば方程式には無限個の解があることがわかりますね。1次不定方程式のときのように無限に、たくさんの解があるのです。

さらに問題を一般化してみると、この魔法の数の性質は例えば
 x^{2}-3y^{2}=1...(方程式A)
のような解に対しても成立します。ちょっとだけ試してみましょうか。

方程式Aの特殊解は (x_1,y_1)=(2,1)ですよね。
では、魔法の数は
 2+\sqrt{3}
のようになるかと思います。

これをべき乗していくと、(2,3くらいでやめときます汗)

 (2+\sqrt{3})^{2}=4+4\sqrt{3}+3=7+4\sqrt{3}

 (2+\sqrt{3})^{3}=8+12\sqrt{3}+18+3\sqrt{3}=26+15\sqrt{2}

というわけで方程式Aの解は

 (x_1,y_1)=(2,1)

 (x_2,y_2)=(7,4)

 (x_3,y_3)=(26,15)

.....

であると簡単にわかっちゃいます。ほんとにすごいですよね。

一般的に

 x^{2}-Dy^{2}=1 (x,yは整数,Dは自然数)

の形の方程式は"ペル方程式"と言われています。
ペル方程式は Dが平方数(何らかの自然数の2乗になっている数)でない限り無限にたくさんの解を持ち、それは魔法の数
 x_1+y_1\sqrt{D}
をべき乗することで見つけられます。(100乗とかになってくるとさすがに見つけにくいですが...それでもx,yに適当に代入して頑張って見つけるよりはめちゃくちゃ楽です)

ちなみにですが面白いことに Dが平方数のとき、
その解は自明な解 (x_0,y_0)=(1,0),(-1,0)以外には一つもありません。 Dが平方数かそうでないかでこの方程式の性質が変わるのは何か不思議ですよね。
例えば
 x^{2}-4y^{2}=1や、
x^{2}-9y^{2}=1には自明な解しかありません。

これは x^{2}-4y^{2}=1の左辺を因数分解して、
 (x+2y)(x-2y)=1とすると分かると思います。
【解説】
x,yは整数なので(x+2y)(x-2y)はどちらも整数となります。
整数のうち、かけ合わせて1になる組み合わせは1×1(-1)×(-1)しかありませんので、
(x+2y)=(x-2y)=1または(x+2y)=(x-2y)=-1となりますが、この2つの連立方程式を解くと
自明な解 (x,y)=(1,0),(-1,0)しかないことが確かめられます!

いかがでしたか?
魔法の数の面白さを少しでも感じていただけたら幸いです!

「中高生にも分かる数学」では数学が苦手な人にも非常に分かりやすい記事を心がけています。
他にもいくつか記事があるので、ご覧いただけると嬉しいです!
では、また他の記事でお会いしましょう!