中高生にも分かる数学

他のサイトでよくある「数式で一般化した美しい数学」より「例題から理解してもらう親しみやすい数学」を目指しています。

無限大は実数?|無限の厄介な性質

【対象年次:中学三年~】

みなさんこんにちは!
中高生にも分かる数学のお時間です。

今回は昔の数学者たちを苦しめた「無限」のお話になります。

突然ですが皆さんは「無限」は実数だと思いますか?
実数な気がするという人もそうでない人も、今回はそのことについて考えながら記事を読んでいただけると嬉しい限りです。

さて、「無限」という概念はそれを学んでいない人や、まだ習いたての人にもある程度理解しやすい概念な気がしますよね。
微分積分という分野を語るうえで外すことのできない「無限」の概念…
何回か使っていると友達かのように親しみがわいてきて、大して難しい扱いを考えなくなることも…
実際「ここを無限大に飛ばすと…」なんて軽い感じで説明したりできます。

…でも待ってください。
本当は「無限」という概念はそこまで簡単なものではないのです!
ここからは僕が高校生の時に疑問に思った無限の扱いと「無限」が持つ厄介な性質について紹介していきたいと思います。

まず「無限」を考える上でとても重要になってくるのが、その大きさの比較ですよね。
実は無限にも大きい、小さいを比べる術があります。
詳しくは高校数学で学ぶことになりますが、まだ習っていない方にもわかるように頑張って説明します!
(極限記号limは使いませんのでご安心ください)

さて早速ですが、無限大に関して次のことがいえます。

x→∞(xが限りなく大きいとき) x^{2}はxよりも大きな無限大である

xが無限に大きなとき、x=∞ではなくx→∞と書くことも覚えておいてください。

ではなぜこのようなことが言えるのでしょうか?
その理由は両者を割り算すると、

\frac{x^{2}}{x}=x→∞

となり、その値は無限大になるので分子の方が強い(≒大きな無限大)ということが分かります。
逆に

\frac{x}{x^{2}}=\frac{1}{x}→0

とすると、0に近づくので分子の方が弱い(≒小さな無限大)ということも分かります。
(\frac{1}{x}はxが限りなく大きい、すなわち無限大のとき0に近づきますね!)

これは「オーダー」といい、
割り算をすることにより無限大の大きさを比べることができるのです。

では次のような無限大の大小はどのように考えればいいでしょうか?

x→∞(xが限りなく大きいとき) xと2xはどちらの方が大きな無限大か

これはオーダーをとると、
\frac{2x}{x}=2という値に落ち着きます。
んー、やっぱりxより2xの方が無限として大きいんじゃない?
「 ∞ より 2∞ の方が2倍だから大きそう!」
という意見が出てきそうですが、ここが無限の落とし穴なのです…

実はこの2つの無限、大きさは同じと判断されるのです。
「マジ?!」って思いますよね(笑)僕も昔はそう思いました。
少し無限の厄介さが分かってもらえましたか?

ではこの現象を考えるために違う命題を考えてみましょう。

自然数」という数は無限個あり、
その中に含まれる「偶数」という数ももちろん無限個あります。
では自然数の個数を仮想的にN (この数は無限大)としましょう。
そしてこちらも無限大ではありますが偶数の個数も仮想的にEとしましょう。
ではこのとき、N,Eの大小関係はどうなるでしょうか?

本当に、普通に考えると偶数は自然数の中に含まれているので、
奇数の個数分自然数より偶数の方が少ない
すなわち
 E < N
と考えてしまうかもしれません。
しかしこれも答えは「NO」です。

無限大の大小を比較するときには有限の数の常識を引き合いに出してはいけないのです。
だとしたら、どうやって比べたらいいのか。
その答えを与えるのが「一対一対応」というものです。

昔の数学者は無限大の大小を比較するための「一対一対応」という方法をとりました。
具体的に自然数と偶数の話を用いてその方法を説明すると、

ある自然数に対してそれに対応する偶数を探します。
例えば1という自然数に対して2という偶数、2という自然数に対して4という偶数、…
という具合に自然数という世界のある要素と偶数という世界のある要素を結び付けてやるわけです。
そうすると、どんな自然数に対しても必ず1つの偶数が見つかり、そして偶数の取りこぼしが一つもない。
すなわち自然数と偶数が「一対一対応」しているわけです。

1↔2
2↔4
3↔6
…

そしてこのように一対一対応を作れるのであれば、自然数の個数と偶数の個数は等しいとみなせるわけです。
すなわち E < Nではなく、E=Nが正しいということになります。
これを応用すると自然数と3の倍数の個数、自然数と4の倍数の個数なども等しくなることが分かるでしょう。
また、奇数に関しても

1↔1
2↔3
3↔5
…

という風にn番目の自然数とn番目の奇数が「一対一対応」しているので、
自然数と奇数の個数も等しくなります。

当たり前なことではありますが、
(自然数の世界)=(偶数の世界)+(奇数の世界)
となり、自然数の世界は偶数と奇数の世界で構成されます。
これを個数の話で置き換えると、
(自然数の個数)=(偶数の個数)+(奇数の個数)
となるはずですが、これらすべての個数はすべて無限大でさらに等しく、

∞=∞+∞=2∞

という結果が得られるわけです。
かなり横暴な話に聞こえますよね。しかし、これは真実なのです…
これが悪夢ならどんなによかったか…

同様の議論で
∞=2∞=3∞=4∞=…
ということが言えます。
これは、
(自然数の世界)=(3で割って1余る数の世界)+(3で割って2余る数の世界)+(3の倍数の世界)
すなわち∞=∞+∞+∞=3∞
(自然数の世界)=(4で割って1余る数の世界)+(4で割って2余る数の世界)+(4で割って3余る数の世界)+(4の倍数の世界)
すなわち∞=∞+∞+∞+∞=4∞
ということを考えればわかりますよね!

そして以上を踏まえて次のことが言えます。

無限大の数を有限倍してもそれは互いに大きさが等しい

正直ヤバいですよねw常軌を逸してますよねえ~
だってこれを認めたら∞=100∞=1000∞みたいな感じになるんですから。
しかし、兎にも角にもこれは数学的に正しいとされることだからウダウダ言っても仕方ありません。
ここからは この無限の性質を認めることにより生じうる無限の扱いにくさを考えていきます。

高校生のときの僕はこう考えました。

「∞も2∞も等しいんだよなあ…
だとしたら2つの直線y=xとy=2xの交点て原点以外に無限遠点の座標(∞,∞)もあるんじゃないか…?」

これは非常に恐ろしい考えですよね。
2つの直線y=xy=2xx座標が大きくなればなるほど遠ざかっていきます。
なのに∞=2∞を認めると、x=∞のとき2直線のy座標が等しくなります。
明らかに交わってないのに、ですよ?

方程式で考えても、
x=2xの解がx=0の他にx=∞が存在していることになり、事態の異常性が理解できます。

この「無限」の異様な性質を考えると、無限は実数ではないと結論づけていいような気がします。

では単なる感想ではなく、数学的に無限は実数に含まれるのかどうか、という話ですが
その答えは「含まれない場合もあるし、含まれる場合もある」ということらしいです。

なんだか煮え切らない答えですね。
実際には「通常の意味における実数には無限は含まれない」というのが普通らしいですが、
「拡張実数」という世界では通常の意味の実数に「正の無限大∞」と「負の無限大-∞」が加えられるらしいのです。

まあ、なにはともあれ「無限」の扱いには注意してください、ということですね!
あまり適当に扱っているといつか痛い目見るかもしれないよ…ということです!

「中高生にも分かる数学」では数学が苦手な人にも非常に分かりやすい記事を心がけています。
他にもいくつか記事があるので、ご覧いただけると嬉しいです!
では、また他の記事でお会いしましょう!