中高生にも分かる数学

他のサイトでよくある「数式で一般化した美しい数学」より「例題から理解してもらう親しみやすい数学」を目指しています。

暗記は不要!?|二倍角の公式 三倍角の公式

【対象年次:高校二年~】

みなさんこんにちは!
中高生にも分かる数学のお時間です。

「二倍角の公式覚えられない!」「…でもいちいち加法定理使って導出するのもめんどくさいし間違えそう...」
今回はそんな二倍角の公式、三倍角の公式の暗記に苦しんでいる皆様のための記事です。

まず、三角関数の二倍角の公式と三倍角の公式はどんなのだったでしょう? 覚えてますか?

 二倍角の公式
 sin2θ=2cosθsinθ
 cos2θ=cos^{2}θ-sin^{2}θ=2cos^{2}θ-1=1-2sin^{2}θ
 tan2θ=\frac{2tanθ}{1-tan^{2}θ}

 三倍角の公式
 sin3θ=3sinθ-4sin^{3}θ
 cos3θ=4cos^{3}θ-3cosθ
 tan3θ=\frac{3tanθ-tan^{3}θ}{1-3tan^{2}θ}

これが公式となります。いやあ…複雑ですね…。
これは加法定理

 sin(α±β)=sinαcosβ±cosαsinβ
 cos(α±β)=cosαcosβ∓sinαsinβ
 tan(α±β)=\frac{tanα±tanβ}{1∓tanαtanβ}

に、 α=β=θを代入すると二倍角が、 α=θ,β=2θを代入すると三倍角の公式が導かれます。
加法定理を覚えていれば全部導き出すことができるのですが、正直面倒臭い…

そんなアナタに朗報です!
実はsinとcosの二倍角の公式、三倍角の公式はある裏ワザですぐに導き出すことができます!!
そのためには複素数の2乗,3乗を計算する必要なので、ついでにここで復習しておきましょう。
複素数 a,bを実数, i虚数単位とすると、

 a+bi

と表されるのでした。これをちょっと2乗してみましょう。 i^{2}=-1に注意すれば、

 (a+bi)^{2}=(a^{2}-b^{2})+(2ab)i

となりますね。
じゃあ今度は複素数

 (cosθ+isinθ)

の二乗を計算してみましょう。
この計算も先ほどの複素数の二乗と同じく考えると、

 (cosθ+isinθ)^{2}=(cos^{2}θ-sin^{2}θ)+(2cosθsinθ)i

となりますね!(実際には a=cosθ,b=sinθを代入すればOK)
ここで気づいた人もいるかもしれません。計算後の複素数の実部と虚部に着目すると、
実部( iのついてない方)にはcosの二倍角と虚部( iのついてる方)にはsinの二倍角が現れてますね。

 実部 = cos^{2}θ-sin^{2}θ = cos2θ
 虚部 = 2cosθsinθ = sin2θ

という感じで、加法定理を使うより簡単に二倍角の公式が作れちゃいました。便利です!!

同じように (cosθ+isinθ)を三乗してみると…


(cosθ+isinθ)^{3} = cos^{3}θ+(3cos^{2}θsinθ)i-3cosθsin^{2}θ-(sin^{3}θ)i
         = (cos^{3}θ-3cosθsin^{2}θ)+(3cos^{2}θsinθ-sin^{3}θ)i

ここで計算結果の実部および虚部を確認すると、


実部 = cos^{3}θ-3cosθsin^{2}θ
   = cos^{3}θ-3cosθ(1-cos^{2}θ)
   = 4cos^{3}θ-3cosθ


虚部 = 3cos^{2}θsinθ-sin^{3}θ
   = 3sinθ(1-sin^{2}θ)-sin^{3}θ
   = 3sinθ-4sin^{3}θ

やっぱり実部にはcosの三倍角と虚部にはsinの三倍角が現れてます!

というわけで、もし加法定理から二倍角、三倍角の公式を出すのが面倒臭くて、サッと出したい場合には複素数の二乗、三乗を計算してみるといいかもしれません。
特に三倍角の公式は加法定理から導くのがメチャクチャ面倒臭いので、かなり使えるかも!
「別に語呂合わせで覚えればいいからいらねーよ。」と言われたら私も黙るしかありませんが…

今回はここまでになります。また他の記事でお会いしましょう!