中高生にも分かる数学

他のサイトでよくある「数式で一般化した美しい数学」より「例題から理解してもらう親しみやすい数学」を目指しています。

√2^√2^√2...はいくつ?|無限べき乗塔の計算方法

【対象年次:高校一年~】

みなさんこんにちは!
中高生にも分かる数学のお時間です。

みなさん、パッと思いつくすごく大きな数字って何ですか?
自分は中学生のころ

2222...

と累乗の上にさらに累乗を重ねたらすごく大きくなるんじゃないかなあ、と考えたりしていました。
実際に試してみると

22=4
222=16
2222=65536

と少し繰り返すだけで、こんなに大きくなります。
これは「べき乗塔」と呼ばれるもので、計算方法にも注意が必要です💀
具体的に言うと、

2222=(22)22=422=(42)2=162=256

と左から計算するのは間違いで、

2222=224=216=65536

と右から計算するのが正しいです。
ちょっと複雑ですが、これが「べき乗塔」がすごく大きな数になる理由でもあります。
そしてこれを無限回繰り返したものが…「無限べき乗塔」です!

2222...

これがとんでもなく大きな数字になることは、容易に想像できますよね…!
もちろん無限に繰り返すので、その値も無限になります。
では2平方根√2で同じことを繰り返すとどうなるでしょう?

√2√2√2√2...

「いやいや、無限回やるんだから同じく無限だろうが」と思いますか?

…実はこの値は有限なんです。
にわかには信じられないかもしれませんが、
なぜこの値が無限ではないのか、そしてその値は何なのか、わかりやすく解説していきますのでお付き合いください!

では最初に、今回求めたい値は

√2√2√2√2...

なので、これを仮にXとおくことにしましょう。このとき、

X=√2√2√2√2...

ですが、赤文字の部分もXと等しいことが分かりますでしょうか?
決められた回数しか計算を行わない場合にはこれは成り立ちませんが、
今回は無限回の計算を行うので、Xも赤文字の部分も形式上ほとんど同じということになります!
というわけで、

X=\sqrt{2}^X

という式が成り立ちますね。
ではこれを満たすXの値はどうなるでしょう?

ここではグラフを利用してXの値を求めてみます。
具体的にはy=xy=\sqrt{2}^xのグラフの交点を求めればよいですが、GeoGebraという非常に便利なサイトがあるので使っていきましょう! https://www.geogebra.org/calculator

さて、y=xy=\sqrt{2}^xxy平面に描いてみました!
そしてこのとき2つのグラフの交点は(2,2)(4,4)だということが分かります。
ということは…さきほどの式X=\sqrt{2}^Xを満たすXの値は2,4となります。
実際に代入すると、確かに成立していることが確認できますね!

すなわち、

√2√2√2√2...=2または√2√2√2√2...=4

ということですね!

って…値が2つあるってオカシイやろ!

はい。すみません。この方法だと24であることが分かりますが、どっちなのかまでは分かりません…
どうしたらいいのでしょうか?

では、今度は不等式を使って考えていきましょう。

さきほど描いたy=\sqrt{2}^xのグラフを見てみてください。
このグラフは右肩上がり、すなわちxが大きくなればなるほど、yの値が大きくなっていきます。
これは

実数a,bの大小がa<bであるとき、\sqrt{2}^a < \sqrt{2}^bである。...(事実A)

と言い換えることもできます。
この事実Aは非常に重要ですので、頭の片隅にしっかり詰め込んどいてくださいね!

ではここで、次のような不等式を考えます。

1<√2

この不等式が正しいことは、 \sqrt{2}=1.414...であることから簡単に分かります。
ではこの不等式に事実Aを適用してみましょう。
a=1,b=\sqrt{2}と置き換えて考えると、

√2<√2√2

という式を導くことができます。
さて、新たに得られたこの不等式にさらに事実Aを適用するとどうなるでしょう?
a=\sqrt{2},b=\sqrt{2}^\sqrt{2}と置き換えて考えると、

√2√2<√2√2√2

という式が新たに得られます。
勘のいい人はもう気付いてしまったかもしれませんが、これを何度も繰り返していくと、

√2<√2√2<√2√2√2<√2√2√2√2<...

という不等式が出てくるのです!
この式により、べき乗塔の個数が多ければ多いほど、その値は大きいということが分かりますね!(これは直感的にも理解しやすいです)

ではここで、べき乗塔

√2√2√2√2...√2

と、べき乗塔の最後の\sqrt{2}2に変えたバージョン

√2√2√2√2...2

の大小を比べてみましょう。
分かりやすくするために、例として√2√2√2と√2√22の大小を比較します。
はい、ここでまた事実Aを思い出してみてください。

実数a,bの大小がa<bであるとき、\sqrt{2}^a < \sqrt{2}^bである。

でしたよね!
これを読み替えると、

\sqrt{2}^a と \sqrt{2}^b の大小を比べるには、aとbの大小を比べればよい。

ということが推察できます。これを先ほどのの大小比較に当てはめると、

√2√2√2と√2√22の大小を比べるには、√2√2と√22の大小を比べればよい

ことになります!
さらにさらに畳みかけるように事実Aをもう一度使えば、

\sqrt{2}^\sqrt{2}<\sqrt{2}^2

であることが分かりますから、最終的に√2√2√2と√2√22の大小比較は

√2√2√2<√2√22

となります。
これを応用していくと、

√2√2√2√2...√2<√2√2√2√2...2

であることも分かります。(べき乗塔の最後を2に変えたバージョンの方が大きい)
これで一件落着…にはまだ早いです。
今度はこの不等式の右辺を計算してみましょう!
べき乗塔の計算は右上の累乗から計算していくルールがありましたね!

√2√2√2√2...2
=√2√2√2√22
=√2√2√22
=√2√22
=√22
=2

すごいですね。気持ちいいくらいに次々と\sqrt{2}が溶けていき、最終的に2になってしまいました!
ということは、

√2√2√2√2...√2<√2√2√2√2...2=2
√2√2√2√2...√2<2

となります。そしてこの不等式はべき乗塔の\sqrt{2}をいくら増やしても変わりません!

さてここで一旦、判明した事実についてまとめましょう。

\sqrt{2}の無限べき乗塔の値は24
√2√2√2√2...=2 or 4

\sqrt{2}のべき乗塔は増やせば増やすほどその値は大きくなる。
√2<√2√2<√2√2√2<√2√2√2√2<...

\sqrt{2}の無限べき乗塔は2より小さい。
√2√2√2√2...<2

以上3つの事実により、√2√2√2√2...は一定の値に近づき、その値は2であることが分かりました!!
お疲れ様です!!

√2√2√2√2...=2

みなさん、スマホの電卓などでこれを計算してどんどん2へ近づいていく様子を確かめてみてくださいね!

いかがでしたでしょうか?
すごく大きな数を作るために考えた無限べき乗塔が、無限ではなく有限でしかも2と小さな値になる場合があるというのは意外でしたよね!
数学はしばしば直感に反することがあるので、しっかりその都度検証していくことが大切です!

「中高生にも分かる数学」では数学が苦手な人にも非常に分かりやすい記事を心がけています。
他にもいくつか記事があるので、ご覧いただけると嬉しいです!
では、また他の記事でお会いしましょう!