【絶対に理解できる!!】カルダノの公式|三次方程式の解の公式
【対象年次:高校二年~】
みなさんこんにちは!
中高生にも分かる数学のお時間です。
突然ですがみなさん、二次方程式の解の公式はご存じですか?
…はい、そうです。
ということでした。
では、二次方程式だけではなく「三次方程式」にも解の公式があることはご存じでしたか?
別名「カルダノの公式」と呼ばれるこの解の公式は、複雑すぎて実用性は低いですが、確かに存在することが証明されています。
今回はそんな三次方程式の解の公式について、それはどんな形の式なのか?どうやって導き出すのか?
絶対に理解できるように丁寧に解説していきますのでぜひ最後までご覧ください!
間違いなく、どのサイトよりも分かりやすいと自負しております!!
①1の三乗根ωについて
まず三次方程式の解の公式を導き出す前の準備として1の三乗根について説明させてください。
もうすでに知ってるという方は飛ばしていただいて構いません!
とりあえず、1の三乗根の意味から考えてみましょう。
1の三乗根とは「三乗すると1になる数」のことです。…そのまんまですねw
ではそれは具体的にはどんな数でしょうか?まず真っ先に思い浮かぶのは…
そう、1ですね。1それ自体も1の三乗根の一つになります。(13=1ですからね!)
では1以外に1の三乗根はあるでしょうか?
「ないんじゃね?」と思った方、…半分正しいです!
確かに実数の範囲には1の三乗根は1以外にありませんが、複素数の範囲まで考えるとどうでしょう?もしかしたらあるかもしれませんよね。
では1の三乗根を求めるためにこんな方程式を考えてみましょう。
これを解けば1の三乗根が全てわかりそうです!
まずは移項して、因数分解してみましょう。
因数分解はを使いました。
ではここで、方程式を解くうえで非常に重要な基本事項を使いましょう。
その基本事項とは、
のことです。
掛け算で0になるときは掛ける前の数のどちらかが0という性質ですね!
これを使えば、
または
ということになります。
はということで問題ないですが、もう一つは二次方程式になってますので二次方程式の解の公式を使って解いてみましょう。
ですので、
となりますね!そしてこの2つの複素数(プラスとマイナスで2つ)も1の三乗根であるはずです。
気になる人は実際に三乗してみてください!
さて、複素数の範囲まで考えると1の三乗根は
の3つあることが分かりました。
このうちをと呼ぶことにしましょう。
ちなみにこの名づけ方はのような変数的命名ではなく、どちらかというとのような定数的命名だということにご注意ください。長くて書くのが面倒臭いので、特別に文字で置き換えているという感じです。
ここで、1の三乗根を含む計算で使える便利な性質を見ていきましょう。
まずは1の三乗根なので当たり前ですね!
そしてはが方程式の解の一つであることを思い出すと理解できます。
(方程式には解を代入すると成立するという性質があります!)
そしてこのとき、だけでなくも1の三乗根になっていることがわかります。
なぜならであり、
確かに三乗すると1になっていますよね。
ちなみにしっかりになってます!
よって、次のことが言えます。
さらに、とを足すとになることも覚えておいて損はないでしょう。
この性質は
から分かります。
②ωを利用した三次式の高度な因数分解
ではセクション1で説明した1の三乗根を利用して三次式を因数分解してみましょう。
因数分解は一般的な意味では「実数の範囲」での因数分解のことを指しますが、ここでは複素数の範囲の因数分解を考えてみます。
例えば、
は実数の範囲ではどうやっても因数分解できませんが、
複素数の範囲では虚数単位を使って、
と無理やり因数分解することができます!
ではここで三次式
を因数分解してみましょう。
まずは実数の範囲で以下のように因数分解できます。
なかなか難しい因数分解ですが、頭のいい人なら簡単にできるかもしれません。
そしてここからさらにを使って複素数の範囲で以下のように因数分解できちゃいます!
んー、難しい!
このように無理やり因数分解することはあまりないですから、拒否反応が起きてしまうかもしれませんが、実はこの因数分解こそが三次方程式の解の公式を導き出す過程で最も重要なポイントであると言っても過言ではないでしょう。
ここでは計算しませんが、この因数分解が本当に正しいかどうか判断するためには括弧を外して展開していくといいと思います。
とであることに注意すればちゃんと計算できるはずです!
ではまとめです。
③三次方程式の変形(立方完成)
三次方程式の解の公式を求めるために、一般的な三次方程式がどのような形をしているのか考えてみましょう。
二次方程式の解の公式を出すときに想定する二次方程式の一般形を思い浮かべれば、答えは簡単です。
これと同じように考えて、
となります!
そして、この三次方程式の一般形に対して
という式にできれば、それが三次方程式の解の公式となります。
ではこの複雑な方程式を少し簡単にするために「立方完成」という操作をしてみます。
この「立方完成」はと変形することではなく、「次数が2の項を消去する」という操作であることにご注意ください!
具体的にどうすればいいかというと、
を代入しての式からの式に変形してください。
こうすることで、次数が2の項がうまく消えてくれるんです!
ではここからは実際の計算になります。
まず両辺をで割って、
ここでを代入し、
括弧を展開し、ミスしないように計算してうまくまとめると
となります。ここで、
と置き換えれば、
と簡単な形になりました。
ここであくまでもは全く関係ない値ではなく、で表されるということに注意してください。
という感じで、計算はだいぶ省きましたが
ということが分かりましたね。
そして狙いどおり次数が2の項が消えてくれました!
先ほども言った通り、目標はを求めることですが、なので
を求めれば自動的にを求めることができるので、ここからは元の方程式の代わりに
を解けばいいということになります!
④解の公式の導出
突然ですが、ここで三次方程式
について考えてみます。これはセクション2で紹介した因数分解を使えば、
と変形できますね。
そしてセクション1で紹介した、方程式を解く上での基本事項を思い出してください。
これは掛け算で0になるときは掛ける前の数のどちらかが0という性質でした。
ここで、これをさらに応用すれば
ということがわかります!この性質を使うと、
ならば、
となります。
2つの方程式の接続/変形
今度は三次方程式を
三次方程式に接続してみましょう。
「いきなりそんなこと言われても…」と思うかもしれませんが、これも非常に重要なステップです。
ちなみにここでいう”接続”とは、簡単に言えば「に適切な数を代入してに変形する」ということです。
では具体的にどのような数を代入すればをに変形できるのでしょうか。
見通しとしては、を変数に移し替えて、を定数に移し替えていくイメージです。
なんだかフワッっとした説明で申し訳ないですが、計算過程を見た方が分かりやすいと思うのでとりあえずやってみますね。
まず単純にで置き換えます。すると、
となります。これだと分かりにくいので項を並び替えてみましょう。
こうして見ると、だいぶに近づいてきたと思いませんか?
さらにここで、
と置き換えることによって、
に変形することに成功しました!ごちゃごちゃしてきたので一旦まとめますね。
また、と置き換えましたが、
これでは具体的なの値が分かりません。
なのでこの関係式からを求めてみましょう!(具体的にはをを含んだ式で表します)
Y,Zをpおよびqの式で表す
まず、をについて解くと、
となりますね。そしてこれを
に代入すると、
となります。ここまでは大丈夫でしょうか?
そしてこのままではが分母にあって扱いにくいので、を両辺に掛けて、
という式になりました。
「…いや、3次方程式解こうとしてるのに6次方程式出てきてしまってるやん…」と思われてしまうかもしれませんが、そうなんです。
3次方程式の解の公式を導くには、一度このような6次方程式を経由しないといけないのです…複雑ですね。
しかし、この6次方程式はある工夫をすればそこまで大変な方程式ではありません。
ではどのような工夫をすれば解けるのか。それは「を1つの文字として見る」ということです!
具体的に式で見ると、
ということです。
こうして見ると分かりますが、この方程式はに関する二次方程式とみなすことができますね!
では実際に解の公式を使って解いてみると
分母にあるをの中に入れて計算すると、
となりました!なんだかそれっぽくなってきましたね!
では今度はの値も求めてみましょう。にこれを代入すると、
ここで、の前にある符号がではなくであることに注意しましょう。
こうしての値が分かりましたが、みなさんはこの2つの違いが「の前にある符号が互いに逆である」だけなことに気づきましたでしょうか?
そして、このことから
のとき
のとき
となることがわかります。
さらにこのは「対称」であるため、符号を勝手に決めてしまって構いません。
ですからここでは、
とすることにします。
「対称」であることは「入れ替え可能である」こととほぼ同じ意味ですが、詳しくは下で解説しておきますので、よく分からないという方は参考にしてみてください!ちなみに、この記事ではを入れ替えても最終的に意味が全く変わらないようになってますので、よかったら確認してみてください。
〈対称 と 対称式 とは〉
ある式の中で、入れ替えても式の内容が入れ替わらない文字があるとき、その文字同士は「対称」であるといいます。
そしてその式のことを、その文字同士における「対称式」といいます。
そして「対称」である2つの数には自由に条件を設定できる場合があります。
例えば、「和が5,積が6になる2つの数は?」と聞かれたときにという式を立てると、
またはという答えが得られますが、実質求められているのはという答えだけなのでがどっちか?がどっちか?ということはどっちでもいいですよね?
だから便宜上にしちゃおう!と考えてもいいわけです。
そしてこうなるのは、が「対称」すなわち「入れ替え可能」であるからなのです。
話を元に戻しましょう。
としたので、ここからさらにを求めましょう。
本当はもう少し慎重に考えなくてはなりませんが、
ここでは単に三乗根をとることでを求めることにします。
ちなみに三乗根とは「三乗すると元の数になる数」のことで、
平方根をで表すのに対し、三乗根はで表すことができます。
ということではそれぞれ、
となります!
さあ、ここまでくれば解の公式まではあと少しです!
解の公式の導出
ここで少し前の話を思い出してください。
三次方程式は因数分解することで、
と変形できて、このとき
となるのでした。
また、三次方程式は、
と置き換えることによって、
に変形することができるのでしたね。
そしてこのとき、
となるのでした。
この2つのことをまとめると、
かつ
なので
または
または
となります。
ここからさらに、立方完成時に使った
すなわち
を代入し、
または
または
最後に移項によりの形にすることと、の中にマイナスの符号を入れることができることに注意して並び替えると、
どうでしょう!
確かにこれはになっていることが分かりますね!
そしてこれが「カルダノの公式」と呼ばれる三次方程式の解の公式になります。
これがあれば、どんな三次方程式も一応解くことができるわけです!
まあ…複雑すぎて覚えられませんけどね…
やはり、この解の公式を導く上で最も重要になってくる部分は
を
と因数分解できることでしょう。
方程式を解くことは「『対称性』を崩すことだ」と言われることがありますが、この因数分解の正体こそ正にその「対称性の崩れ」だと思います。
なぜなら一段階前のという形でははどれを入れ替えても式の意味は変わらないのに、
とさらに1の三乗根を使って因数分解することによって、およびは互いに入れ替えられなくなってしまっているからです。
いやあ…興味深いですね…
さて、いかがでしたでしょうか?
かなり長々しい記事になってしまいましたが、それだけ三次方程式の解の公式を導出することは骨が折れる、ということですね!
もし、この記事が三次方程式の解の公式の導き方を理解するための助けになれたら幸いです。
「中高生にも分かる数学」では数学が苦手な人にも非常に分かりやすい記事を心がけています。
他にもいくつか記事があるので、ご覧いただけると嬉しいです!
では、また他の記事でお会いしましょう!