中高生にも分かる数学

他のサイトでよくある「数式で一般化した美しい数学」より「例題から理解してもらう親しみやすい数学」を目指しています。

自然数の分割|美しい数の性質をご紹介!!

【対象年次:中学一年~】

みなさんこんにちは!
中高生にも分かる数学のお時間です。

今回は自然数の「分割」についてお話したいと思います。
この記事は小学校高学年の方でも一応理解できるようになっていますので、ぜひ最後までご覧ください!

まず、自然数の「分割」とは何でしょうか?
「なんか難しそう…」と思われてしまいそうですが、その定義は意外にも簡単です。

自然数nを自然数の和で表す方法

これはどういうことでしょうか?
例があると理解しやすくなると思いますので、例えば4の分割について考えてみましょう。

4=1+3=2+2=2+1+1=1+1+1+1

なので、4の分割は

(1+3),(2+2),(2+1+1),(1+1+1+1)

の4通りであることが分かります。

※海外では4自体を分割に含め全体で5通りとする理論もありますが、
日本で「自然数」の意味は0を含まないことになっているので
今回は4+0を「分割」には含めないこととしておきます。

このように「分割」とは同じ数を使ってもよく、何回足し算記号を使って表してもよいですが、
(1+3),(3+1)のような、ただ順番を変えたようなものは同じとみなすルールがあります。

さて、「分割」というものを説明しましたが、
「正直、だから何なの?」という気持ちになると思います。
しかしここで言いたいのは、重要なのは「分割の方法」よりもむしろ「分割のパターン数」ということです。

先ほど例に挙げた4の分割について考えてみましょう。
4の分割は

(1+3),(2+2),(2+1+1),(1+1+1+1)

であるとわかりました。このとき分割のパターンは4種類なので、次のような数式で書くことにします。

p(4) = 4

この数式の意味を言葉で説明すると、
4を分割したときのパターン数は4である」
ということです。
一般的に自然数nを分割のパターン数をp(n)と表します。

たとえば3
3=1+2=1+1+1のように分割されるので、p(3)=2ということになりますね!

そして今回ご紹介したいのは分割の中でも特に、「2つの自然数の和で表す分割」についてです。
例としては
4=1+3=2+2
3=1+2
などのことです。
このような分割を特別に「二分割」と呼ぶことにします。
また、自然数nの二分割のパターン数をp_2(n)を表すこととしましょう。
定義の紹介が多くて申し訳ありませんが、今後の話をスムーズにするためにご了承ください…!

では、例として20の二分割を求めてみましょう。
順番を変えただけのものは同じとみなすので、

20=1+19=2+18=3+17=4+16=5+15=6+14=7+13=8+12=9+11=10+10

の10通りであることが分かりますね。 よってp_2(20)=10と表すことができます。
他には奇数である9も二分割すると、

9=1+8=2+7=3+6=4+5

の4通りであることが分かります。
同様にp_2(9)=4と表すことができますよね。
ここから推察すると、次のような事実が分かります。

nが偶数ならばp_2(n)=\frac{n}{2},nが奇数ならばp_2(n)=\frac{n-1}{2}

これはなんとなく正しそうだし、実際に正しいです。
ここでは証明しませんが、20,9の二分割を見ればほとんど証明できたようなものだと思います。

どうですか?ここまではまだ簡単ですよね。
では今度は二分割した自然数同士が互いに素(最大公約数が1)になるような分割を考えてみましょう。
また、このような分割を特別に「相素分割」と呼ぶことにします。
二分割した後の自然数が互いに(相互に)素であるような分割なのでこのように呼びます!
さらに、自然数nの相素分割のパターン数をq_2(n)を表すこととしましょう。

20の相素分割は先ほどの二分割のうち、互いに素であるものを選べばいいので、

20=1+19=3+17=7+13=9+11

となり、q_2(20)=4となりますね。
9の相素分割も同様に、

9=1+8=2+7=4+5

となるので、q_2(9)=3となります。

…いきなり法則性がつかめなくなってきましたね。
頭のキレる人はもう法則性を見つけているかもしれませんが、
法則性が見つけられない人はもう少し一緒に例題を見ていきましょう。

(例題)
7,13を二分割および相素分割せよ

ではまず、7を二分割すると
7=1+6=2+5=3+4
となり、p_2(7)=3となります。また、相素分割は
7=1+6=2+5=3+4
となり、これもまたq_2(7)=3となります。

では次に、13を二分割すると
13=1+12=2+11=3+10=4+9=5+8=6+7
となり、p_2(13)=6となります。また、相素分割は
13=1+12=2+11=3+10=4+9=5+8=6+7
となり、これもまたq_2(13)=6となります。

はい、どうでしょうか?
7,13素数で二分割と相素分割が全く同じ分割になりました。
すなわち二分割後の数が常に互いに素となっているということです。
ではこのようなことはなぜ起こるのでしょうか?

ここで、素数pを二分割した後の自然数が常に互いに素であるということを「背理法」用いて証明してみましょう。

もとの命題が間違っている、すなわち
素数pを二分割すると、互いに素でない2つの自然数a,bによってp=a+bと表される場合があると仮定します。
このとき、a,bは互いに素でないのでその共通因数をK(2以上の自然数)とすると、
a=Ka',b=Kb'(a',b'は自然数)と表すことができるので

p=a+b
p=Ka'+Kb'
p=K(a'+b')

となりますが、K≥2,(a'+b')≥2なので
pが2以上の自然数の積で表されることになりますよね。
これはp素数であるということに矛盾してしまいます。
よって仮定が間違っており、元の命題が正しいことが分かるのです。

このことから、素数を二分割したときの2つの自然数は常に互いに素となり、
その結果「二分割」と「相素分割」が完全に一致するわけです。
もちろん分割のパターン数も等しくなるのでp_2(素数)=q_2(素数)となるのです。
さらに2以外の素数はすべて奇数であり、そのときp_2(n)=\frac{n-1}{2}だったので、次のようなことが言えます。

pが2以外の素数ならば
その二分割と相素分割は完全に一致し、
p_2(p)=q_2(p)=\frac{p-1}{2}

ということが分かりました。
もちろん2の場合は2=1+1であるので
p_2(2)=q_2(2)=1ということができます。

では素数ではない9,20などの自然数の相素分割はどのように表すことができるのでしょうか?
先ほども述べたように、9の二分割と相素分割は
9=1+8=2+7=3+6=4+5
9=1+8=2+7=4+5
となります。ここで二分割のうち相素分割ではないものに着目してみましょう。
9=3+6=3(1+2)
この括弧のなかの分割は9の約数である3の二分割になっていることが分かります。
同様に20の二分割と相素分割は
20=1+19=2+18=3+17=4+16=5+15=6+14=7+13=8+12=9+11=10+10
20=1+19=3+17=7+13=9+11
であり、分割のうち相素分割ではないものに着目すると、
20=2+18=4+16=5+15=6+14=8+12=10+10
20=2(1+9)=4(1+4)=5(1+3)=2(3+7)=4(2+3)=10(1+1)
であり、括弧の中の分割は20の約数である2,4,5,10の相素分割をすべて網羅していることが分かります。
このことから、20の二分割のうち、約数である2,4,5,10の相素分割の分を差し引けば20の相素分割のパターン数となることが示唆されますね!
式で表すなら、
q_2(20)=p_2(20)-q_2(2)-q_2(4)-q_2(5)-q_2(10)
q_2(20)=10-1-1-2-2=4
となります。

ヤバい、話についていけないという方のために2,4,5,10の相素分割についても解説しておきましょう。
2,5については素数なので、二分割と相素分割は一致し、
2=1+1
5=1+4=2+3
より、
q_2(2)=p_2(2)=\frac{2}{2}=1
q_2(5)=p_2(5)=\frac{5-1}{2}=2
となることが分かるでしょう。
4については
4=1+3=2+2のうち相素分割であるものは、4=1+3のみなので
q_2(4)=1となり、
10については
10=1+9=2+8=3+7=4+6=5+5のうち相素分割であるものは、10=1+9=3+7なので
q_2(10)=2となりますね!

ここで、ちゃんと
q_2(4)=p_2(4)-q_2(2)=2-1=1
q_2(10)=p_2(10)-q_2(2)-q_2(5)=5-1-2=2
となっていることにことにも気づきましょう!

再び
q_2(20)=p_2(20)-q_2(2)-q_2(4)-q_2(5)-q_2(10)
に着目しましょう。
この式のq_2(20),p_2(20)を移項して両辺に-1をかけると、
p_2(20)=q_2(2)+q_2(4)+q_2(5)+q_2(10)+q_2(20)
となり、この右辺に0を足しても式は変わらないので、
p_2(20)=0+q_2(2)+q_2(4)+q_2(5)+q_2(10)+q_2(20)
となります。
ここで1はこれ以上分割できないことを考えるとその分割のパターン数は0と考えることができるので、
p_2(1)=q_2(1)=0となり、
p_2(20)=0+q_2(2)+q_2(4)+q_2(5)+q_2(10)+q_2(20)に代入して、
p_2(20)=q_2(1)+q_2(2)+q_2(4)+q_2(5)+q_2(10)+q_2(20)
という式を得ることができました!

この法則をまとめると、

p_2(n)=q_2(nの約数1)+q_2(nの約数2)+q_2(nの約数3)+…

となります。

ああ~、非常に美しい式ですね…!
ちなみにこの式の右辺は自然数nの約数の個数分の項があることになります。

いかがでしたでしょうか?
自然数を2つの自然数の和に分解する「二分割」のパターン数が、その約数の「相素分解」のパターン数の総和で表されるのは何かロマンのようなものを感じずにはいられないですよねえ~…

「中高生にも分かる数学」では数学が苦手な人にも非常に分かりやすい記事を心がけています。
他にもいくつか記事があるので、ご覧いただけると嬉しいです!
では、また他の記事でお会いしましょう!