エルデスシュトラウスの予想を証明!⑥「z差分法」と解の存在域
エルデスシュトラウスの予想に関する記事もこれで6つ目になります。
今回はという方法を用いてエルデスシュトラウスの予想の解を見つけていきたいと思います。
まずとは何かと言いますと、
エルデスシュトラウスの予想の解が満たしうる条件
を変形して、
とすることです。
こので差をとることからです。
じゃあなんでなの?とかでもよくない?!
という意見がありますが、ちゃんとである理由があるのです。
前回の記事をすでに見ている方は大丈夫ですが、まだ見ていない方はぜひご覧ください。
この記事にも書いてありますが、(**)の解形式におけるはのうち「最小」の数であるとのことでした。
これはすなわち、(**)の解形式において、のうち「最大」であるのはであるということが言えるのです。
そして、この3つの分数のうち最大であるを引いてあげることで、効率よくの大きさを減らしてあげることができるのです!
じゃあ、効率よく減らせることが何の利点になるのかというと、それはこれからする説明を理解してもらう必要があります。
ここでを行った左辺を計算していきましょう。
となりますね。
ここでx,yが自然数であることを考えると、(右辺)が正の値であることが分かるので、
同時に(左辺)が正の値であることも分かります。
もちろんn,zも自然数なので
ここでということに注意すると、
となりますね!
また、zが自然数であることに注意して不等式を書き換えると、
となります。
この変形は前回の記事でも行っていますね。
より大きく最小の自然数はという考えからこの変形を行うことができるのです。
また、前回記事の式①
にを代入して、
となることが分かります。
以上2つの結果により、
となることが分かり、
エルデスシュトラウスの予想が成立するためのの値の範囲が決定されます。
ここから理解できるように、が3つの数の中で「最小」であるため、
このエルデスシュトラウスの予想が成立する解の存在域も「最小」に設定することができるのです!
もしこれがやの不等式だと範囲はもっと広くなってしまうでしょう。
考えなくてはいけない範囲が減るので、もちろんこの「解の存在域」は狭い方がよいということになります。
これでさきほどの
という理由が理解できると思います!
さて、これで一段落…
と思ったのもつかの間、実はこのの上限、(**)の解形式においてはもっと縮めることができるのです!
前回はと紹介しましたが、実際のはよりもっと小さな数なのです!
今からそれを証明しましょう。
っと、その前に準備として次のような定理を紹介しましょう。
この定理は特別難しくはなく、割と簡単に理解できると思います。
おなじみの背理法で証明してみましょう。
仮にもも1ではない、すなわちと仮定しましょう。
このとき右辺の最大値はとがそれぞれになるときで、その値は
となりますね。しかし、左辺は仮分数すなわち1より大きい数ということでした。
どれだけ頑張って右辺を大きくしようとしても、左辺に届くことはありません。
これは矛盾ですね!
よって、上記の定理が正しいことが分かります。
さて、話はかなり戻りますが、を用いて得られた式
の左辺の大きさについて評価してみましょう。
解形式(**)においては
となるので、これを代入すると、
両辺にnをかけて、
となることがわかりますね!
ここで先ほどの<特殊単位分数定理>を用いてみましょう!
では、のときとしてみましょう。
このときはすべて自然数なのでとなることがわかります。
(自然数同士の積が1となる場合は1×1×1×…=1しかありえません!)
これを(**)の解形式が満たす式
※解形式(**)を代入すると得られます
に代入してみましょう!
とすると、
を代入し、式を整理すると、
となりますが、左辺は3の倍数であるのにも関わらず右辺は3で割って2余る数になっています。
両辺の余りが一致していないので、この式は矛盾を含むことになります。
よって矛盾した式を導くもとの仮定が間違っているということになります。
もしとした場合でもこれはとを入れ替えただけになり、
という式が得られて結局おかしくなるので、さらにもとの条件
が間違っていることとなり、さらにこの分数は1になることはないので
という結果が得られますね!
さらにこれを変形して、
ここにを代入して、
という結果が得られますね!
この素晴らしい結果を考慮すると解の存在域は次のように書き換えることができます。
さっきの式よりはだいぶ範囲が狭くなりましたよね!
…しかし、これで満足する私ではありません。
まだ貪欲にもう少しだけ範囲を狭めることができるのです。
それについてはまた次回以降ご紹介いたします!
では、また次の記事でお会いしましょう!