中高生にも分かる数学

他のサイトでよくある「数式で一般化した美しい数学」より「例題から理解してもらう親しみやすい数学」を目指しています。

エルデスシュトラウスの予想を証明!⑥「z差分法」と解の存在域

エルデスシュトラウスの予想に関する記事もこれで6つ目になります。
今回は「z差分法」という方法を用いてエルデスシュトラウスの予想の解を見つけていきたいと思います。

まず「z差分法」とは何かと言いますと、

エルデスシュトラウスの予想の解が満たしうる条件
\frac{4}{n} = \frac{1}{x} + \frac{1}{y} + \frac{1}{z}
を変形して、
\frac{4}{n} - \frac{1}{z} = \frac{1}{x} + \frac{1}{y}
とすることです。

この\frac{1}{z}で差をとることから「z差分法」です。
じゃあなんでzなの?x,yとかでもよくない?!
という意見がありますが、ちゃんとzである理由があるのです。

前回の記事をすでに見ている方は大丈夫ですが、まだ見ていない方はぜひご覧ください。

picolinateu.hatenablog.com

この記事にも書いてありますが、(**)の解形式におけるzx,y,zのうち「最小」の数であるとのことでした。
これはすなわち、(**)の解形式において、\frac{1}{x},\frac{1}{y},\frac{1}{z}のうち「最大」であるのは\frac{1}{z}であるということが言えるのです。
そして、この3つの分数のうち最大である\frac{1}{z}を引いてあげることで、効率よく\frac{4}{n}の大きさを減らしてあげることができるのです!

じゃあ、効率よく減らせることが何の利点になるのかというと、それはこれからする説明を理解してもらう必要があります。
ここで「z差分法」を行った左辺を計算していきましょう。

\frac{4}{n} - \frac{1}{z} = \frac{1}{x} + \frac{1}{y}
\frac{4z-n}{nz} = \frac{1}{x} + \frac{1}{y}

となりますね。
ここでx,yが自然数であることを考えると、(右辺)が正の値であることが分かるので、
同時に(左辺)が正の値であることも分かります。
もちろんn,zも自然数なので

4z-n >0
4z >n

ここでn=24k+1型の素数ということに注意すると、

4z >24k+1
z >6k+\frac{1}{4}

となりますね!
また、zが自然数であることに注意して不等式を書き換えると、

z ≥6k+1

となります。
この変形は前回の記事でも行っていますね。
6k+\frac{1}{4}より大きく最小の自然数6k+1という考えからこの変形を行うことができるのです。
また、前回記事の式①
z ≤ n-1
n=24k+1を代入して、

z ≤ (24k+1)-1
z ≤ 24k

となることが分かります。
以上2つの結果により、

6k+1 ≤ z ≤ 24k

となることが分かり、
エルデスシュトラウスの予想が成立するためのzの値の範囲が決定されます。
ここから理解できるように、zが3つの数の中で「最小」であるため、
このエルデスシュトラウスの予想が成立する解の存在域も「最小」に設定することができるのです!
もしこれがxyの不等式だと範囲はもっと広くなってしまうでしょう。

考えなくてはいけない範囲が減るので、もちろんこの「解の存在域」は狭い方がよいということになります。
これでさきほどの
なぜ「z差分法」なのか
という理由が理解できると思います!

さて、これで一段落…
と思ったのもつかの間、実はこのzの上限、(**)の解形式においてはもっと縮めることができるのです!
前回はz ≤ n-1と紹介しましたが、実際のznよりもっと小さな数なのです!
今からそれを証明しましょう。

っと、その前に準備として次のような定理を紹介しましょう。

<特殊単位分数定理>
仮分数であるような分数\frac{A}{B}(>1)において
\frac{A}{B}=\frac{1}{p}+\frac{1}{q}(p,qは自然数)と2つの単位分数に分解するとき、そのどちらかは1である

この定理は特別難しくはなく、割と簡単に理解できると思います。
おなじみの背理法で証明してみましょう。

仮に\frac{1}{p}\frac{1}{q}も1ではない、すなわちp≥2,q≥2と仮定しましょう。
このとき右辺の最大値は\frac{1}{p}\frac{1}{q}がそれぞれ\frac{1}{2}になるときで、その値は
\frac{1}{p}+\frac{1}{q}=\frac{1}{2}+\frac{1}{2}=1
となりますね。しかし、左辺は仮分数すなわち1より大きい数ということでした。
どれだけ頑張って右辺を大きくしようとしても、左辺に届くことはありません。
これは矛盾ですね!
よって、上記の定理が正しいことが分かります。

さて、話はかなり戻りますが、「z差分法」を用いて得られた式
\frac{4z-n}{nz} = \frac{1}{x} + \frac{1}{y}
の左辺の大きさについて評価してみましょう。

解形式(**)においては
x=nrab,y=nrbc
となるので、これを代入すると、

\frac{4z-n}{nz} = \frac{1}{nrab} + \frac{1}{nrbc}
両辺にnをかけて、
\frac{4z-n}{z} = \frac{1}{rab} + \frac{1}{rbc}
となることがわかりますね!
ここで先ほどの<特殊単位分数定理>を用いてみましょう!

もし、\frac{4z-n}{z} >1ならば、\frac{1}{rab}および\frac{1}{rbc}のどちらかは1と等しい

では、\frac{4z-n}{z} >1のときrab=1としてみましょう。
このときr,a,bはすべて自然数なのでr=a=b=1となることがわかります。
(自然数同士の積が1となる場合は1×1×1×…=1しかありえません!)
これを(**)の解形式が満たす式
4rabc=nb+c+a  ※解形式(**)を代入すると得られます
に代入してみましょう!

r=a=b=1とすると、
4c=n+c+1
n=24k+1を代入し、式を整理すると、
3c=24k+2
となりますが、左辺は3の倍数であるのにも関わらず右辺は3で割って2余る数になっています。
両辺の余りが一致していないので、この式は矛盾を含むことになります。

よって矛盾した式を導くもとの仮定が間違っているということになります。
もしrbc=1とした場合でもこれはacを入れ替えただけになり、
3a=24k+2という式が得られて結局おかしくなるので、さらにもとの条件

\frac{4z-n}{z} >1
が間違っていることとなり、さらにこの分数は1になることはないので

\frac{4z-n}{z} <1

という結果が得られますね!
さらにこれを変形して、

4z-n <z
3z <n

ここにn=24+1を代入して、

3z <24k+1
z <8k+\frac{1}{3}
z ≤8k

という結果が得られますね!
この素晴らしい結果を考慮すると解の存在域は次のように書き換えることができます。

解形式(**)において、 6k+1≤ z ≤ 8kとなる範囲にしか解は存在しない

さっきの式よりはだいぶ範囲が狭くなりましたよね!
…しかし、これで満足する私ではありません。
まだ貪欲にもう少しだけ範囲を狭めることができるのです。
それについてはまた次回以降ご紹介いたします!

では、また次の記事でお会いしましょう!

picolinateu.hatenablog.com

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