中高生にも分かる数学

他のサイトでよくある「数式で一般化した美しい数学」より「例題から理解してもらう親しみやすい数学」を目指しています。

エルデスシュトラウスの予想を証明!④(解形式ラスト)

今回はパート4、前回まで解説してきた「解形式」の解説は今回が最後となります。
さっそく前回の復習から始めましょう。
前回は解形式(*),(**)におけるα,β,γの関係性について調べていた途中で終わっていましたね。これは前回の記述です。

「αがもつ因数はすべてβかγがもっている」...(A)
「βがもつ因数はすべてγかαがもっている」...(B)
「γがもつ因数はすべてαかβがもっている」...(C)

こんなことを言っていたのを覚えてますか?これである程度α,β,γの関係性を見出すことができたのでしたね。
では今回は解形式ラストということでさらに掘り下げていきたいと思います。

(A)の記述から見ていきたいと思います。

「αがもつ因数はすべてβかγがもっている」...(A)

この記述から分かるαの因数の種類は3つあることになります。
重要なことはαが持つ因数はβかγのどちらかが持っている、ということです。
αのみが持つ因数は存在しません。

まず1つは「βだけが持っている因数」が考えられます。βかγが持っているということだったので、βだけが持っている因数があっても(A)と矛盾はありませんよね??
同じ理由で「γだけが持っている因数」も考えられますね。
そして3つ目に考えられるものは「β,γがどちらも持っている因数」です。やはりこれにも(A)の条件とは矛盾がないです。

というわけで、条件(A)から導かれるのは、
α=(βだけが持つ因数)\times(γだけが持つ因数)\times(β,γどちらも持つ因数)

そのほかの(B),(C)の条件について考えるとβやγもαのように3つの自然数の積で書けるような気がしますね!
条件(B)から得られる式:
β=(γだけが持つ因数)\times(αだけが持つ因数)\times(γ,αどちらも持つ因数)
条件(C)から得られる式:
γ=(αだけが持つ因数)\times(βだけが持つ因数)\times(α,βどちらも持つ因数)

この3つの条件式から新たな文字を使ってα,β,γを表すことができるわけですが、
このまま言葉で説明してもわかりづらいので、

因数集合
という概念を使って図的に説明していきたいと思います!

「因数集合」はある自然数nの素因数を要素にもつ集合のことで、
もちろんその要素すべての積(ここではこれを集合の全積と呼びます)は自然数nと等しくなります。
数式で表すと
自然数nを素因数分解すると
 n=p_1^{n_1}\times p_2^{n_2}\times p_3^{n_3}\times…
となるとき、その因数集合の要素は
 n_1個のp_1,n_2個のp_2,n_3個のp_3,…
となります。
この要素の全積はもちろん
p_1をn_1回、p_2をn_2回、p_3をn_3回、…と掛け合わせるので、
 p_1^{n_1}\times p_2^{n_2}\times p_3^{n_3}\times…=nになるわけですね!…

…よくわかりませんね(笑)
僕がエルデスシュトラウスの予想を理解するために考えた概念なので、学校でも習いませんし、
よく分からなくて当然だと思います。
しかし、そこで諦めてしまっては面白くないので例を挙げて理解してみましょう。

もちろん理解が苦しいと思ったら最後まで読み飛ばしてもらっても構いません!
因数集合の概念から得られた結果のみを最後にきれいにまとめて示しておくので大丈夫です!

例題>>
自然数30,50,42について因数集合をベン図に表してみよう

f:id:exponential0805:20190323023813p:plain

こんな感じになります。
※ここからは集合の概念を習ってない高校1年生以下の人は記号が理解しにくいと思いますが、 ご了承ください。

まず、それぞれ素因数分解すると30=2\times 3\times 5, 50=2\times 5^{2}, 42=2\times 3\times 7となりますね。
30,50,42における最大公約数が2なので真ん中のすべてに共通する部分に2があります。
また、30と50の最大公約数は10なので30の因数集合と50の因数集合の共通部分(30⋂50)の全積は10となり、
そこから42の因数集合を除いた集合(30⋂50)/42の全積は5となります。
同様に(30⋂42)の全積は6となり、(30⋂42)/50の全積は3となります。

ここで気づくのが「因数集合(〇⋂▢)の全積は〇,▢の最大公約数になっている」ということですね!
そしてもう一つ気づくのが「因数集合(〇⋂▢)/△の全積は〇,▢の最大公約数の素因数のうち△とは互いに素であるもののみを掛け合わせたもの」ということです。

では(50⋂42)の全積と(50⋂42)/30の全積はどうなるでしょうか?
前者はもちろん50と42の最大公約数なので2ということが分かります。
そして後者は50と42の最大公約数のうち30と互いに素であるもの…はないですねw
このとき全積は「1」であると定義します。これはその集合には要素となる素因数はないということを表しています。
ベン図を見ても分かるようにその部分の全積は1であると表記されていますね!

最後に因数集合のうち重ならない部分の全積も考えようと思います。
まず30のみがもつ素因数はないので1、42のみがもつ素因数は7なので7がそれぞれ全積として書いてあります。
では50のみがもつ素因数の部分はどうでしょう?5が書いてありますね。
あれれ?でも5は30も素因数として持ちますから、この5は間違いなのではないかという考えが浮かびますよね?
しかし、僕が考えた因数集合の概念ではこれは正しいことになります。
なぜなら、50が持つ素因数のうち5は2つありますが、その片方の5は(30⋂50)に持っていかれています。このとき、この2つの5は区別されて
「50と30の共通因数としての5」と「50のみが持つ素因数としての5」に分けられるのです。

…というわけで因数集合の概念については多少理解していただけたでしょうか?
そしてここからはエルデスシュトラウスの予想を解くためにこの概念を応用していきたいと思います。

まず条件(A)(B)(C)から得られる式は以下の3つでした。

α=(βだけが持つ因数)\times(γだけが持つ因数)\times(β,γどちらも持つ因数)
β=(γだけが持つ因数)\times(αだけが持つ因数)\times(γ,αどちらも持つ因数)
γ=(αだけが持つ因数)\times(βだけが持つ因数)\times(α,βどちらも持つ因数)

このとき、このα,β,γが持つ因数集合は以下のようなベン図で表されることが分かります。

f:id:exponential0805:20190323034152p:plain

(画像の関係上見づらいですが、右上がα、左上がβ、下がγです)
これは、いったいどういうことなのでしょうか?

これはこのような文字の置き換えで説明されます。
(γの因数のうちαだけが持つ因数)=(αの因数のうちγだけが持つ因数)=((γ⋂α)/βにおける全積)=a
(αの因数のうちβだけが持つ因数)=(βの因数のうちαだけが持つ因数)=((α⋂β)/γにおける全積)=b
(βの因数のうちγだけが持つ因数)=(γの因数のうちβだけが持つ因数)=((β⋂γ)/αにおける全積)=c
(α,β,γが持つ共通因数)=(α,β,γの最大公約数)=((α⋂β⋂γ)における全積)=r

このように置き換えたとき、α,β,γは以下のように表すことができるでしょう。

 α=(βだけが持つ因数)\times(γだけが持つ因数)\times(β,γどちらも持つ因数) = b\times a\times r = rab
 β=(γだけが持つ因数)\times(αだけが持つ因数)\times(γ,αどちらも持つ因数) = c\times b\times r = rbc
 γ=(αだけが持つ因数)\times(βだけが持つ因数)\times(α,βどちらも持つ因数) = a\times c\times r = rca

さらに、以下のような条件が追加されます。
 a,b,cはすべて互いに素 = a,b,cの最大公約数は1
(これはα,β,γの最大公約数rに共通因数が全て吸い取られている、というイメージをすると理解できるかもしれません)

…どうでしょうか。
多分ここはかなり難しい部分かもしれません。
ここを言葉で分かりやすく説明する自信があまりないというのが正直なところです。
新しい概念の話ですからね( ;∀;)

さて、これによって分かったことが以下の通りになります。
前回の記事の復習も絡めたいと思います!


エルデスシュトラウスの予想の解の形式は以下の2通りある。

 (x,y,z)=(nα,β,γ)...(*)
 (x,y,z)=(n^{t}α,n^{t}β,γ)...(**)

このときのα,β,γの構造は(*)(**)でともに同じで、


βγ ≡ 0(modα)

γα ≡ 0(modβ)

αβ ≡ 0(modγ)

と表される。(modは前回記事で深く説明/余りを考える演算でした)
これを解析すると、
最大公約数が1となるようなa,b,cを用いて

 α=rab
 β=rbc
 γ=rca

と書けるため、解の形式はさらに以下のように書き下すことができる。(解形式に代入)

 (x,y,z)=(nrab,rbc,rca)...(*)
 (x,y,z)=(n^{t}rab,n^{t}rbc,rca)...(**)


はい、どうでしょうか?
「因数集合」やベン図がよくわからなかったよ、って人はここだけ覚えて次の記事以降にトライしてみてください!
ここを乗り切れば、あとはまたみんなが知っている概念で話を進めていけると思います!

あと、どこかで使うかもしれないので一応説明しておくと、実は

nが素数ならば (n,a)=(n,b)=(n,c)=(n,r)=1(a,b,c,rはすべてnとは互いに素)

が成立します。

前回の記事でも述べたように(n,α)=(n,β)=(n,γ)=1であるわけで、
αを例にとって考えると
α=rabと表せるから、nがαと互いに素ならばαはnを因数に持つはずはなく、そのαの因数であるr,a,bももちろんnを因数に持つはずがないのです。
これをβ、γも同様に考えれば理解できそうですね!

さて、今回はここらへんで終わりにしたいと思います。
そして次回は解形式(**)におけるnの累乗の指数tが邪魔なので、これが1であるということを証明したいと思います。
もちろんこれを証明するためには今回の記事が重要なのでしっかりと覚えてから望んでくださいね!

では、また次の記事でお会いしましょう~

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