エルデスシュトラウスの予想を証明!⑤(t=1定理)
エルデスシュトラウスの予想 今回はパート5になります。
前回も宣言しました通り、解形式(**)における定理を証明したいと思います。
もし定理が証明できれば解形式(**)はさらに簡単に書くことができて、
となります。こうなれば素晴らしいですよね!
ではさっそくであることを証明していきます!
まず、エルデスシュトラウスの予想の解となる場合、
すなわち
となる必要があります。
ここで、型の素数と限定すると、解形式(*)(**)が使用できるのでした。(パート1参照)
これに解形式(**)を代入して式を整理すると
なので
となります!(省略しているので自分で代入して計算してみてください!)
さてここで両辺のに対する合同式を考えてみましょう。
言い換えれば両辺のに対する余りを考えようということですね!
このとき、およびはの倍数(を因数に含む)なので、
となりますよね。(合同式忘れてしまった人はパート2,3を見直してください!)
というわけで、
という結果が得られます!この結果を解析してみましょう。
実際このという値はどれくらいの大きさなのでしょうか?
もしこの値が素数nを越えられないようなら、その累乗で割り切れるということはおかしなことです。
もっと分かりやすく説明しましょうか。
素数の定義を考えれば、ある素数nはそれより小さな数とはすべて「互いに素」であるはずですね。
ということは素数nより小さな自然数がnで割り切れる(すなわち、がnの倍数)ということはありえないはずなのです。
よく考えてみてください、例えばn=73(素数)のとき73の倍数は73,146,219,…となるはずですね。
73より小さな数が73の倍数であるはずがありません!
この考えからがnに対してどれ位の大きさなのかを評価していきましょう!
さて、話は少し変わりますがx,y,zとnの大小関係はどのようになるでしょうか?
ここでは仮にx,y,zがどれもn以上としてみます。このとき、
すなわち
なので、この両辺をすべて足し合わせると
となりますが、実はこれはおかしな矛盾が起こっています!
エルデスシュトラウスの予想の解になるならば、
である必要がありますが、先ほど得られた不等式と合わせると
あれ?おかしいですよね。
nが自然数なら明らかに右辺は左辺より小さいはずで、これは矛盾です。
よって「x,y,zがどれもn以上」という仮定が間違っていて、
という理論が導けるのです。
さて、問題はx,y,zのどれがn未満であるかということですが、解形式(**)をみれば一目瞭然です!
は自然数でしたので、x,yはともにnの倍数であることがわかります。
もちろんさきほども述べたように、nの倍数はn以上でなくてはなりません。
よってnの倍数であるx,yは
となることが理解できますね!
ならば、n未満となるのはであるということも同時に分かります。
rcaおよびnが自然数ということを考慮し、等号付きの不等号に変形して
(自然数の範囲で考えると未満ということは以下と同じ意味ですよね!)
さて、今何を知りたいのかというとc+aの最大値でした。
このaとcの和を最大にしたい場合a,cの値自体が大きくなくてはいけませんよね?
なので、aとcの積の不等式である式①におけるa,cを最大となるようにとればいいことが分かります。
もし仮にrが大きくなっていくとその分、積caの値が減っていくので
rはできるだけ小さいほうがいいですよね。よって、
ということが分かり、これを式①に代入して
aは自然数なのでaで両辺を割ると、
さらに両辺にaを足して、
が得られます。
この右辺はnを定数として考えるとaの関数になっていることが分かるので、
と置きこの最大値を求めることで結果的にの最大値を求めることにします!
※このの最大値を求めるのに微分を用いますので、数Ⅲを履修していないと厳しいところがありますが、ある程度のところまではわかるように解説するので頑張ってみてください!
微分については数Ⅱで習う範囲は深くは説明していないのでご了承ください。
まず、を微分してみましょう。
が自然数のとき
となることが知られていますが実はコレ、
が整数のときにも成り立つ式だということを数Ⅲで学ぶことができます。
(実際にはkが実数の範囲まで成り立ちますが、ここでは使いません)
これを利用すると、
であることがわかりますので、
となります。
ここから数Ⅱで習う3次関数の微分と同じ要領で
となるの値と、の増減表を書いていきましょう。
とすると、
なので、式を整理すると
aは正の値なので、
となりますね!
増減表は以下の通りになります。
(aの範囲について詳しく話していませんでしたが、
aは自然数なので最小値は1、式②より最大値はn-1となります!)
さて、この増減表を参考にすると
は (グラフの両端)のとき最大値をとるということが分かります。
ということは
であり、式③より、
これをまとめると、
というa,cの和に関する不等式が得られました!
これによりという値は以下であることが判明したのです!
ここでさらに前に戻って式を確認してみましょう。
解形式(**)において
が成立し、に対する余りを考えて、
という式が得られたのでした。
この式の意味を言葉で表すと、
となり、これと式④を合わせて考えるとの範囲を限定できます。
ここで、としてみましょう。
このときはの倍数ということになりますが、ここで思い出してください。
ある自然数Nの倍数はN以上の数である
という性質から、はの倍数なので
という不等式が得られますが、実はこれはおかしな状況になります。
なぜなら1以外のすべての自然数nにおいて
が成立するので、式⑤と合わせると
すなわち、
が得られますが、これは式④と矛盾するからです!
式④()と式⑤から得られる式()はもちろん同時に成立しないからですね!!
式④は正しいはずなので式⑤が間違っていることになります。
そして間違っている式⑤を導いたという仮定が間違っているということになりますね。
さらにと増やしていってもと同じように式④と矛盾した式が得られてしまいます…
(省略してますが、気になる人は自分で試してみてくださいね!)
これにより
という条件に絞り込むことができるのです!
あとはラストスパートです!
式④の条件式
を
の2つに分解して考えてみましょう。
条件Aのときt=1とt=2の場合があります。
t=1のとき、解形式(**)の等式
にt=1および条件Aのc+a=nを代入すると、なので
となります。
右辺はnの倍数ですが、前回の記事(パート4)で紹介した
「nが24k+1型の素数ならば、a,b,c,rはすべてnとは互いに素]
という事実を用いれば、左辺はnとは互いに素である→nの倍数ではないということがわかりますね!
というわけで、等式の左辺はnの倍数ではなく、右辺はnの倍数という矛盾が生じるので条件Aにおけるt=1の場合はあり得ないということになるのです!
また条件Aにおけるt=2の場合についても考えてみましょう。
解形式(**)の等式
にt=2およびc+a=nを代入すると、
両辺をnで割って、
さらに移項して整理して、
ここで、とは自然数で、両者の積が1となる場合は
の場合しかありません。(1×1=1しかありませんね!)
に着目します。
まずnを移項して
ここで、n=24k+1型の素数なのでこれを代入して
ここで両辺の4で割ったときの余りを考えると、
左辺では4の倍数なので0、右辺では2が余ることになります。
これもこの等式に矛盾があることを示していますね!(両辺の余りが等しくないときにはその等式に矛盾がある)
よって条件Aのt=1の場合とt=2の場合はどちらも矛盾がありアウト!
ということで条件Bのみが残りました。
条件Bはとのことですが、このときはn未満の自然数となるのでもちろんnの倍数にはなり得ません。
ということは、
に矛盾がないようにするにはではいけないのでという結果が導かれるのです!!
まとめると、
解形式(**)はt=1定理により、
と書き直すことができ、解はだけの式で記述することができることが分かったということです!
例としてn=73(24k+1型の素数)のときの(**)形式の解を1つ求めてみましょう。
解の探索方法はこれからの記事でご紹介いたしますので、今は下のような式が見つかった前提でお話しますね。
このとき、
なので、
となることがわかります。
このときちゃんとa,b,cが互いに素であることも分かりますよね。
さて、これまでは「解の構造」を調べてきましたが次回以降の記事では「解の見つけ方」を紹介しようと考えています。
思った以上にこのエルデスシュトラウスの予想の解は多く存在していることが分かっていただけるだろうと思います!
では、また次回の記事で会いましょう!