中高生にも分かる数学

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格子点に当たらないレーザービーム

【対象年次:中学一年~】

みなさんこんにちは!
中高生にも分かる数学のお時間です。

レーザービーム!?
タイトルで??と思った人も多いかもしれません。
今回は「」

そうです、「格子点」です。

意味としては

xおよびyがともに整数であるような座標(x,y)

のことですね。すなわち座標が整数の点のことです。
例を挙げるなら、(0,0),(2,3),(-1,8)などでしょうかね。
そしてこの格子点はx-y座標平面にびっしりと無限に存在しています。

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ではここで面白いことを考えてみましょう。

あなたは広大な海原(x-y座標平面)に放り出されてしまいました。
あなたは原点にいます。
このままだと数日後には溺死してしまうので、何とかSOS信号を出そうとあなたは思いました。
そんなところに、無限に遠くまで届くレーザービームを発する機械を発見しました。
これを使えばどうにか救助を呼ぶことができそうです。
ですが、ここで問題が一つ。
実は海上には等間隔に光に反応する爆弾が設置されており、あなたのSOS信号を邪魔してきます。に格子点 に存在する格子点上に光に反応する爆弾が設置されてしまったとします。
そして、原点上にいるあなたは好きな方向(角度)にレーザービームを放ちます。
もちろんレーザービームの光が格子点にある爆弾に当たると即座に爆発してしまいます。

このときあなたは格子点にある爆弾を爆発させずに、無事にレーザービームを放つことができるでしょうか?

という問題ですが、これは次のように言い換えることができます。

原点以外の格子点を通らないような直線は存在するか?

てか結局言い換えるなら最初から例なんて出すなよって?
許してください。例題を使うことで分かりやすくすることがモットーのブログなので…

さて、どのような直線が原点以外の格子点を通らないのでしょうか?
まず原点を通る直線は「比例」の式と同じなのでy=axと表されることが分かります。
例えばy=\frac{5}{7}xのような直線はどうでしょうか?
これはx=7のときy=5となるので格子点(7,5)を通ってしまいます。

この例から考えるとどうやらy=axという

例えば
y=\sqrt{3}x
は、原点(0,0)以外の格子点を通りません。
そのことをたしかめてみましょう。60°の角度で放てばよい そうすれば全て交わすことができる

y=\sqrt{2}x原点(0,0)を通ることは、
x=0,y=0がこの方程式の解になることから容易に分かります。
ではそれ以外の格子点はどうでしょう。格子点を通るためには

y=\sqrt{2}xのxとyが同時に整数になる

という必要がありますが、果たしてそれは可能でしょうか?
もしxが0以外の整数ならば、もちろん\sqrt{2}x無理数となります。
ということは、yは整数ではないことになってしまいます。
すなわち、

xが0以外の整数ならばyは整数ではない

x,yは0以外に同時に整数とはならない

直線y=\sqrt{2}xは原点以外の格子点を通らない

よってそのような角度でレーザービームを発射すれば爆弾を爆破させることなく平和、ということですね!
また、原点も含む格子点すべてを通らないような直線も作ることができます。
例えば、y=\sqrt{2}x+\sqrt{3}とかです。本当にそうなるか確かめてみてください!

では、今回はこれで終わりです。

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では、また他の記事でお会いしましょう!

無限降下法【例題から解説!!】|フェルマーの早とちり

【対象年次:中学一年~】

みなさんこんにちは!
中高生にも分かる数学のお時間です。

突然ですが、みなさん「背理法」ってご存知ですか?
背理法は中学校で習う基本的かつ最も重要な証明方法の一つです!
まだ習っていなかったり、よく分からない人のために分かりやすく説明すると、

背理法とは
「ある命題を間違っていると仮定し、その矛盾を証明することで、もとの命題を間接的に正しいと証明する方法」

と言うことができます。
そして今回はその背理法に似た「無限降下法」という証明法を紹介したいと思います。
この無限降下法は自然数を扱う命題を証明するのに役立ちます!
例を挙げて無限降下法について説明しましょう。

 方程式
 x^{2}+y^{2}=3z^{2}に自然数の解は存在するだろうか?

うーん、存在するのかしないのかよくわからない…
そんなとき武器となるのが"無限降下法"です。

まず、最初にするべきことは背理法と同じように"仮定"です。

 方程式を満たす自然数の組(x,y,z)は存在する

と仮定するのです。
これを基準に考えていきましょう。

  x^{2}+y^{2}=3z^{2}
の右辺は3の倍数なのでもちろん左辺も3の倍数でなくてはいけません。
では、 x^{2},y^{2}がどのような数ならば左辺は3の倍数になるでしょうか?
ここで次のような場合が考えられます。

パターン1. (x,y)がともに3の倍数

パターン2. (x,y)がともに3の倍数ではない

という2つのパターンですね。
あれ?片方が3の倍数で,もう片方が3の倍数ではない場合はやんなくていいの?
と考えたアナタ!
僕は嬉しいですよ。そこに気づいてくれて。
しかし、それは考える必要がありません。
なぜなら、xが3の倍数、yが3の倍数ではないとき
x^{2}は3の倍数、y^{2}は3の倍数ではないので、
x^{2}+y^{2}=(3の倍数)+(3の倍数でない)=(3の倍数ではない)
となり、左辺は3の倍数ではなくなるからです!
逆にyが3の倍数であるときもxは3の倍数ではないので、
同様にx^{2}+y^{2}は3の倍数ではなくなりますね。

さて、さっそくパターン2から考えていきましょう。
3の倍数でない数というのは
(3で割って1余る数),(3で割って2余る数)
の2種類があります。
よって、パターン2にはさらに以下の3パターンに分類されるのです。

パターン2A. x,yがともに3で割って1余る数
パターン2B. x,yがともに3で割って2余る数
パターン2C. xが3で割って1余る数、yが3で割って2余る数

ここで
xが3で割って2余る数、yが3で割って1余る数
の場合は考えなくていいの?という質問が出るかもしれませんが、
これは結局
xが3で割って1余る数、yが3で割って2余る数
と同じ意味になるので考える必要はありません。
これはもとの方程式がx,yを入れ替えても式の意味が変わらない「対称式」だからです。
よく分からない人は自分で代入して確かめてみると理解できるかもしれませんね!

というわけで、各パターンについてx^{2}+y^{2}が3の倍数になるかどうかを確かめていきましょう。

パターン2Aは
x=3a+1,y=3b+1(a,bは自然数)とおくことができるので
x^{2}+y^{2}=(3a+1)^{2}+(3b+1)^{2}=3(3a^{2}+2a+3b^{2}+2b)+2
となり、x^{2}+y^{2}は3で割って2余る数、すなわち3の倍数ではありません。
(計算は省略してあるので、自分で計算してみてください!)

パターン2Bは
x=3a+2,y=3b+2(a,bは自然数)とおくことができるので
x^{2}+y^{2}=(3a+2)^{2}+(3b+2)^{2}=3(3a^{2}+4a+3b^{2}+4b+2)+2
となり、x^{2}+y^{2}は3で割って2余る数、すなわち3の倍数ではありません。

パターン2Cは
x=3a+1,y=3b+2(a,bは自然数)とおくことができるので
x^{2}+y^{2}=(3a+1)^{2}+(3b+1)^{2}=3(3a^{2}+2a+3b^{2}+4b+1)+2
となり、x^{2}+y^{2}は3で割って2余る数、すなわち3の倍数ではありません。

というわけでパターン2はx^{2}+y^{2}が3の倍数になる場合がない、すなわち
  x^{2}+y^{2}=3z^{2}
が成立することはない、ということになりました!全滅ですね。


ちなみに、この3パターンを計算してみると必ず
x^{2}+y^{2}=(3で割って1余る数)+(3で割って1余る数)=(3で割って2余る数)
となっていることに気づきましたか?
気づいていたら素晴らしいです!
これは「平方剰余」といって"2乗した数は3で割った余りが1にしかならない"という性質からくるものです。
いくつかの自然数を2乗して3で割って確かめてみてもいいかもしれませんね!
文字を使って簡単に証明できますが、本筋とあまり関係ないのでここでは省かせていただきます!


なにはともあれ、あとはパターン1しかないわけです。

パターン1はx,yがともに3の倍数であるというのですから、
x=3x_1,y=3y_1(x_1,y_1は自然数)
と表せますよね。
実際に代入すると
 x^{2}+y^{2}=3z^{2}
 (3x_1)^{2}+(3y_1)^{2}=3z^{2}
 9x_1^{2}+9y_1^{2}=3z^{2}
両辺を3で割って、
 3(x_1^{2}+y_1^{2})=z^{2}
となりますが、今度は左辺が3の倍数になりました。
ということは右辺も3の倍数でなくてはならないので…
zも3の倍数でなくてはいけませんね!

z=3z_1(z_1は自然数)とおいてみると、
 3(x_1^{2}+y_1^{2})=z^{2}
 3(x_1^{2}+y_1^{2})=(3z_1)^{2}
 3(x_1^{2}+y_1^{2})=9z_1^{2}
両辺を3で割って、
 x_1^{2}+y_1^{2}=3z_1^{2}

あ!と気づく人もいるかもしれませんね!
なんと、この式は元の式の形と同じになっていることが分かります。

 x^{2}+y^{2}=3z^{2}

 x_1^{2}+y_1^{2}=3z_1^{2}

式の形は同じで文字だけが入れ替わっているという感じです。
そしてこの(x,y,z)(x_1,y_1,z_1)の関係は

x=3x_1,y=3y_1,z=3z_1

なのでした。
これを見ると、(x_1,y_1,z_1)のどれも元の(x,y,z)より小さくなっていることが分かります。
(すべて3分の1ですね)
そしてもちろん(x_1,y_1,z_1)も方程式 x^{2}+y^{2}=3z^{2}の解となっているわけです。

これに味をしめて
x_1=3x_2,y_1=3y_2,z_1=3z_2
としてもう一度同じことを繰り返すと、もちろん

 x_1^{2}+y_1^{2}=3z_1^{2}

 x_2^{2}+y_2^{2}=3z_2^{2}

という式が生まれてくるわけです。
言わずもがな、(x_2,y_2,z_2)も方程式 x^{2}+y^{2}=3z^{2}の解となっているわけです。
これが無限降下法のミソとなる部分です。

最初に方程式
 x^{2}+y^{2}=3z^{2}
自然数の解 (x,y,z)が存在するということを仮定することで、
それより小さな自然数の解 (x_1,y_1,z_1)が生まれ、
それによりさらに小さな自然数の解 (x_2,y_2,z_2)が生まれ、
それよりさらに…とどんどん小さな自然数の解が生まれていくわけです。
分かりやすく式で書くと、

 x^{2}+y^{2}=3z^{2}

 x_1^{2}+y_1^{2}=3z_1^{2}

 x_2^{2}+y_2^{2}=3z_2^{2}

…

となるにつれて、

(x,y,z)

(x_1,y_1,z_1)

(x_2,y_2,z_2)

…

とどんどん小さな解が生まれるんですね。

方程式 x^{2}+y^{2}=3z^{2}自然数の解(x,y,z)が存在する
↓(ならば)
無限にそれより小さな解(x_n,y_n,z_n)が作れる

ということになりますが、ここであることを考えると矛盾があることに気づきます。
それは自然数下限が1であるということです。

ある自然数の解(x,y,z)をスタートとしてそれより無限に小さな解を作った場合、
最終的には解が1未満になってしまうはずです。
これはおかしい。自然数は必ず1以上でなくてはなりません。
ここに矛盾があるので、背理法でもおなじみ、仮定が間違っていることが疑われるわけです!

自然数の解が存在すると仮定

無限に小さな解が作れる

最終的に自然数じゃなくなるじゃん(矛盾)

方程式
x^{2}+y^{2}=3z^{2}
自然数の解が存在すると仮定すると矛盾が生じるので、
自然数の解は存在しない。
という結論が導かれるのです!

このように、自然数の大きさがどんどん無限に降下していくという矛盾から
無限降下法
と名づけられたのです。

さて、そんな無限降下法ですがみなさんも知っているとっても有名なあの数学者が考案したといわれています。
そう、あのフェルマーの最終定理でおなじみのフェルマーさんです。
彼は相当意地悪な性格だったらしく、まだ未発見の方法で解いた問題を数学者に送り付けて
数学者たちが四苦八苦する姿を楽しんでいたという話もありますw

フェルマーはこの無限降下法を考案して「私の方法」と呼び様々な命題を解きましたが、
問題は彼の死に際に起こりました。
彼は最後の力を振り絞り、

x^{n}+y^{n}=z^{n}となる自然数x,y,zはnが3以上の自然数のとき存在しない

ということを証明できたが、余白が少なすぎてここには証明が書けないといい、亡くなりました。

この命題こそかの有名な「フェルマーの最終定理」でしたが、 フェルマーは本当にこの定理を自分で証明できていたのでしょうか?

現在の見解ではそれは「NO」ということになっています。
それはフェルマーの最終定理が"楕円関数理論"、"モジュラー形式"、"フライ曲線"など
当時存在しなかった概念を用いてやっと証明されたからであり、
彼が愛用していた「無限降下法」を用いて簡単に証明できるような代物ではなかったからです。

現在ではフェルマーの最終定理は彼が無限降下法を用いて証明できると勘違いして提唱された定理ということで決着がついています。
なんだか悲しいですね…('_')

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ピエール・ド・フェルマー(wikipediaより)

今回はフェルマーと絡めて「無限降下法」という証明法について紹介させていただきました。
最後までご覧いただきありがとうございました!!

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では、また他の記事でお会いしましょう!

素数が1つもない範囲は存在する?|素数砂漠

【対象年次:中学一年~】

みなさんこんにちは!
中高生にも分かる数学のお時間です。

今回は「素数」に関する話です!

みなさん、突然ですが、100番目の偶数は何か分かりますか?
そうです。200ですね。
100×2を計算すれば簡単に分かります。

では、100番目の素数は何か分かりますか?
そうです。541です。(即行グーグルで調べましたw)

このように、「〇番目の偶数」や「▢番目の3の倍数」などは計算で簡単に求められますが、
「何番目の素数」のように素数の話になると、急に難しくなります。

では、以下の式に自然数nを代入してみてください。

n^{2}-n+41

n=1のとき41
n=2のとき43
n=3のとき47

と、順番に試していくとこれらの値はすべて素数になります。

すごい!これは素数生成マシーンだ!と思いますよね?
この式は「オイラー素数生成式」と呼ばれ、確かにたくさんの素数を生成できる式として有名です。
ですが、この式も完璧ではなくn=41n=42のときは素数ではない数が生成されてしまいます。

さて、みなさんも薄々気付いているかと思いますが、素数の出現に絶対的なルールを見つけることは難しいです。
そうかもしれないし、そうではないかもしれない。

では、素数に関して「絶対に〇〇」と言えるようなルールはないのでしょうか?

…結論から言うと、普通にあります

今回はそんな素数絶対に存在しない区間「素数砂漠」についてお話ししたいと思います!


まず、nの階乗についておさらいしましょう。
nの階乗n!と表され、

n! = n(n-1)(n-2)…3\times2\times1

となるのでしたね。

これは高校一年生で習いますが、定義は中学一年生でも簡単に理解できると思います。
例えば4!=4×3×2×1=24という感じです。

そしてこのn!は、1~nまでのすべての自然数で割り切れるという性質を持っています。
これは当たり前で、n!1からnまでの自然数を順番にすべてかけ合わせて計算するからです。

ではこれを踏まえたうえで、このような数たちを考えてみるとどうでしょう?

n!+2, n!+3,..., n!+(n-2), n!+(n-1), n!+n

ごちゃごちゃしていますが、これはn!2~nまでそれぞれ足した値です。
ではこれらの数の中に素数はあるでしょうか?

実は1つもありません。

なぜなら、n!2からnまでのすべての数で割り切ることができ、

n!+2=2×(\frac{n!}{2}-1) ←2の倍数
n!+3=3×(\frac{n!}{3}-1) ←3の倍数
…
n!+(n-2)=(n-2)×(\frac{n!}{n-2}-1) ←(n-2)の倍数
n!+(n-1)=(n-1)×(\frac{n!}{n-1}-1) ←(n-1)の倍数
n!+n=n×(\frac{n!}{n}-1) ←nの倍数

となるからです。(2以上の何らかの倍数である数は、素数ではありませんね!)

というわけで、
n!+2以上、n!+n以下である自然数の中には素数であるものは1つもなく、

 n!+2≦N≦n!+n

の中には絶対素数が存在しない、ということになります!

そして、この区間の長さ(広さ?)はnを大きくすればするほど、長くなります。
nを大きくしていけば無限に長い素数のない「砂漠」を作り上げることができるという訳です!


いかがでしょうか?
このように絶対的なルールがないように見えた素数にも、一定のルールを見つけることができます。

さらに今回は解説しませんが、素数が絶対に存在する区間

 n<N≦2n

というものもあり、これもいずれ解説できたらなと思います!

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では、また他の記事でお会いしましょう!

数をたくさん足すとどうなるだろう2(バーゼル問題)

いきなり前回の続きからです。今回は微分がわからない人はつらいかもしれませんがご容赦ください。

前回は下のような等式を紹介したと思います。
 1+\frac{1}{2^{2}}+\frac{1}{3^{2}}+\frac{1}{4^{2}}+...=\frac{π^{2}}{6}
この"バーゼル問題"を証明するにはいくつかの準備が必要です。

まず1つ目の準備は三角関数sinの"マクローリン展開"をすることです。
マクローリン展開って何?なんかキモイんですけど」
すみません。でも今からちゃんとわかりやすく説明するので聞いてみてください。

簡単に言えば、
多項式でない関数を無限級数として無理やり多項式にする
ということです。
"数学は言葉"なのでまずはわかりやすく言葉で説明しましょうか。
ではまず"多項式"とはまず何だったでしょうか。
そう、多項式とは例えば
 x^{2}+1,x^{3}+4x^{2}-3などのよく見る xの式のことです( xじゃなくて yとかでもいいけど)。
多項式には定数項、 xの項、 x^{2}の項、 x^{3}の項...とあるわけです。
逆にこのようにあらわされる式を多項式と呼ぶのです。
では多項式でないものとは例えばどんなものでしょうか?その例としては、
 \sqrt{x},sinxなどがあります。確かにこれは多項式とは全く違った表記がされているため多項式とは言えません。
こういった多項式でない関数
 y=\sqrt{x}
 y=sinx
などを無理やり多項式に変える方法マクローリン展開なのです。そしてその無理やりな部分が無限級数としてあらわすこと、すなわち xの式の無限回の足し算で表す、ということなのです。

では、その具体的な方法はどうすればよいのでしょうか?それが以下のような数式で説明されます。
 「関数f(x)は以下のようにマクローリン展開することができる   f(x)=f(0)+\frac{f'(0)}{1!}x+\frac{f''(0)}{2!}x^{2}+\frac{f'''(0)}{3!}x^{3}+...」

「いきなり言われてもわかんないんですケド」
ですよね~(笑)ちゃんと説明するので許してください。

まず !は階乗記号でたとえば 5!=5×4×3×2×1となります。
「その数から1ずつ減らして1までかけていく」というわけですね!

また、 f'(x) f''(x)微分記号で前者は1回,後者は2回 f(x)微分したことになります。
"微分"という操作はまだ習っていない人にも分かるように簡単に説明すると、

 xの累乗の指数を前に掛けて、その分指数を1減らす。

という操作です。
これは数学的な定義とはかけ離れた説明ですが、かなりわかりやすい説明だと思います。
本当は「微分」することは「接線の傾き」を求めること、という数学的な意味があるのですが、それは高2の授業で習うと思います!
微分をすでに習っている人は無視して構いません~

例題>> f(x)=5x^{3}微分するということは、さっきの定義に従うと
xの累乗の指数(=3)を前に掛けて、その分指数を1減らす(3-1=2) ので、
f'(x)=15x^{2}となります。(5は係数としてそのまま)

ではようやくここでマクローリン展開を行ってみようと思いますが、
式で見てもつかみにくいと思うのでとりあえずやってみましょう。
微分を習っていない人もさっきの計算方法をマスターして、一緒に計算してみましょう。

例題>>
多項式の関数 y=x^{3}+4x^{2}-3マクローリン展開

 f(0)=-3,
 f'(x)=3x^{2}+8xなので、 f'(0)=0すなわち \frac{f'(0)}{1!}x=0,
 f''(x)=6x+8なので、 f''(0)=8すなわち \frac{f''(0)}{2!}x^{2}=4x^{2},
 f'''(x)=6なので、 f'''(0)=6すなわち \frac{f'''(0)}{3!}x^{3}=x^{3},
また、4回以上微分すると必ず0になるので、 f''''(0)=f'''''(0)=...=0となります。
よってマクローリン展開すると
 f(x)=x^{3}+4x^{2}-3となります。
「アレ?マクローリン展開したら元に戻ったんですケド。騙された?」
いえいえ、そんなことはないですよ。
多項式でできた関数をマクローリン展開するとそれ自身に戻る性質があります!

では、今度は多項式でない関数 y=sinxマクローリン展開してみましょう。
と、言いたいところですが sinx微分法は数Ⅲで学習する内容なので、
ここでは sin微分はこのようなものなんだよ、と決めてからマクローリン展開することにします。

 f(x)=sinxとすると、
 f'(x)=cosx,f''(x)=-sinx,f'''(x)=-cosx,f''''(x)=sinxとなります。
 sinは面白いことに2回微分すると自身の逆符号に、4回微分すると自分自身に戻る性質があります。
詳しくは数Ⅲで習ってください!
というわけで、
 f(0)=0,f'(0)=1,f''(0)=0,f'''(0)=-1,f''''(0)=0,...ですので、 sinxマクローリン展開すると、
 sinx=x-\frac{1}{3!}x^{3}+\frac{1}{5!}x^{5}-\frac{1}{7!}x^{7}+...となります!
先ほどと同様にマクローリン展開の公式に代入するとこうなります。
自分で公式に代入して確かめてみてください!
ここでとりあえず1つ目の準備が整いました。次の準備に取り掛かるとしましょう。

2つ目の準備は sin因数分解することです。
あれ?さっきよりは簡単?因数分解でしょ?と思うかもしれません。
確かに多項式因数分解は数Ⅰや数Ⅱでも学習する基本事項ですが今回は多項式でない sin因数分解です。
思うほど簡単ではありませんが、厳密さを求めなければ感覚的には理解はできると思います。

まず多項式因数分解する際にはどんなことを考えるでしょうか?
2次式なら九九みたいに何も考えずパッとやっちゃう人が多いと思いますが3次以上では因数定理というものを用いていたと思います。
まだ習っていない人も、例題を見て学んでみてください。

 因数定理
 多項式P(x)においてP(a)=0ならば、P(x)はx-aを因数にもつ。

例題>>
二次方程式 x^{2}-5x+6に対して因数定理を用いてみましょう。
P(x)=x^{2}-5x+6とすると、P(2)=0でありP(3)=0ですよね。
ということは、
P(x)は(x-2),(x-3)を因数に持つ
ことになります。
よってP(x)は次のように因数分解されることになります。
P(x)=(x-2)(x-3)
これは中学校でもやる因数分解ですね!
このように解となる xの値を利用することで多項式因数分解することができるのです。

ではお待ちかね、これを sin因数分解に応用してみます。
 P(x)多項式という条件ですが、 sinxマクローリン展開の式を多項式と見れば因数定理を無理やり使えそうです。
言い換えれば sinマクローリン展開の式
 sinx=x-\frac{1}{3!}x^{3}+\frac{1}{5!}x^{5}-\frac{1}{7!}x^{7}+...
を因数定理を用いて因数分解できるはずだということです。

ここで P(x)=sinxに対して P(a)=0となる aを探してみますが、
よく考えると aは方程式 sina=0の解であるということがわかります。
 sina=0の解は a=0,π,-π,2π,-2π,...なので
※高校2年生の分野です。弧度法を理解しないといけないので説明は難しいですが、
ここではそういうものだと考えてみます。
すなわち、 sin0=sinπ=sin(-π)=sin2π=sin(-2π)=…=0ということになります。
因数定理によれば
 P(x) x,x-π,x+π,x-2π,x+2π,...を因数に持つことになります。ここでちょっとまとめましょう。
頭がこんがらがった場合には因数定理がどういうものだったか、ページを上に戻ってみるのもいいかもしれません。

 P(x)=sinx P(x) x,x-π,x+π,x-2π,x+2π,...を因数にもつので、
 sinx=Ax(x-π)(x+π)(x-2π)(x+2π)...因数分解できるはずですね。(Aは定数)

さて、ここでちょっとズルみたいな反則級の技を使います(笑)
定数Aは不明な値なのですがこれを消すために次のような変形をします。
Ax(x-π)(x+π)(x-2π)(x+2π)...=x(1-\frac{x}{π})(1+\frac{x}{π})(1-\frac{x}{2π})(1+\frac{x}{2π})…
この式変形はかっこの中の式を -π,π,-2π,2π…で割っていくと得られ、代わりに定数Aが消えます。
これはA

A=\frac{1}{π\times(-π)\times2π\times(-2π)…}

という性質を持っていたから、ということに他なりません 。 (よくわからない人はAを再度sinxの式に代入してみてください。約分するとそうなります!)
また、この式変形は x=0,π,-π,2π,-2π,...を代入したら0になるという性質を保ったままの変形ですね!

さらに、中学で習う(x-k)(x+k)=x^{2}-k^{2}より隣り合うかっこ同士を展開すると
sinx=x(1-\frac{x}{π})(1+\frac{x}{π})(1-\frac{x}{2π})(1+\frac{x}{2π})…=x(1-\frac{x^{2}}{π^{2}})(1-\frac{x^{2}}{(2π)^{2}})…
と変形できます。
これがsinx因数分解となるのです。

また、右辺を確認するとこの式は無限回の掛け算であることがわかります。
これは無限回の足し算"無限級数"に対して"無限乗積"と呼ばれています。
この概念は無限級数の掛け算バージョンと考えれば割と簡単に理解できるでしょう。

これでやっとやっと準備が整いました!
本当に長かったですね…丁寧に説明するとこんなに長くなるとは…
いよいよバーゼル問題の解決に踏み出しましょう!!

まず、sinxマクローリン展開で得られた多項式因数分解で得られた式はお互いに
「恒等式」
であることがわかります。
恒等式とは、お互いに"次数" "すべての項の係数"がどちらも等しい多項式同士のことをいいます。
これは結局全く同じ式同士のことを言っているのですよね!
例えば、x^{3}-x+3恒等式の関係にあるものはx^{3}-x+3しかありません。当たり前ですよね(笑)
もちろんsinxsinx恒等式同士です。
ということはマクローリン展開したsinx因数分解したsinxもどちらも同じsinxであることには変わりないのですから、
この二つは恒等式であるといえるのです。

ではここで因数分解したsinxx^{3}の係数について考えてみましょうか。
sinx=x(1-\frac{x}{π})(1+\frac{x}{π})(1-\frac{x}{2π})(1+\frac{x}{2π})…=x(1-\frac{x^{2}}{π^{2}})(1-\frac{x^{2}}{(2π)^{2}})…
でしたから、展開するときにその項がx^{3}になるためには、

展開する際にかっこの中の数字を選ぶとき、1つだけは右の項を選びそれ以外は1(左の項)を選ぶ。

という必要があります。
これは展開するときに2つ以上右の項から選んでしまうとxの次数が5以上になってしまうからで、
1つしか選ばないとかっこの外にあるxと合わせてxの次数がちょうど3になるからだとわかるでしょう。
ではこれを踏まえてx^{3}の係数を考えると、
x(-\frac{x^{2}}{π^{2}}-\frac{x^{2}}{(2π)^{2}}-\frac{x^{2}}{(3π)^{2}}-\frac{x^{2}}{(4π)^{2}})…
x^{2}をくくりだして、
x^{3}(-\frac{1}{π^{2}}-\frac{1}{(2π)^{2}}-\frac{1}{(3π)^{2}}-\frac{1}{(4π)^{2}})…
となるので、x^{3}の係数は
 (-\frac{1}{π^{2}}-\frac{1}{(2π)^{2}}-\frac{1}{(3π)^{2}}-\frac{1}{(4π)^{2}})…という無限の足し算で表されることになります!
あともうちょっと!!

ところでマクローリン展開したsinxx^{3}の係数はどうだったでしょう?
sinxマクローリン展開
 sinx=x-\frac{1}{3!}x^{3}+\frac{1}{5!}x^{5}-\frac{1}{7!}x^{7}+...
だったから…
そう、-\frac{1}{3!}=-\frac{1}{6}です!

勘のいい人ならもう気が付いたかもしれません。
因数分解したsinxマクローリン展開したsinx恒等式でした。
恒等式はすべての項の係数が等しいわけで、この両者のx^{3}の係数を比べると…

(-\frac{1}{π^{2}}-\frac{1}{(2π)^{2}}-\frac{1}{(3π)^{2}}-\frac{1}{(4π)^{2}})…=-\frac{1}{6}
両辺に-π^{2}をかけて、


ド---------ン

1+\frac{1}{2^{2}}+\frac{1}{3^{2}}+\frac{1}{4^{2}}+...=\frac{π^{2}}{6}

いやー、どうでしたか?
長かったですね…
この問題の肝としてはsin因数分解するという
天才数学者オイラーの独創的な発想を用いて解くというところでしょうか。

余談ですがこのバーゼル問題はベルヌーイ一家が解こうとして失敗し、そのあとオイラーによって解かれたのですが、
実はそのベルヌーイ一家の故郷がバーゼルであったのと、さらにオイラーの故郷もバーゼルだった、
というところからこの名前が付けられたらしいです。

結構分かりにくい部分もあったと思いますが、最後までお付き合いいただきありがとうございました!!!

ゼータ関数と素数|誰でもその凄さが分かる解説!!

ゼータ関数

 ζ(s)=1+\frac{1}{2^{s}}+\frac{1}{3^{s}}+\frac{1}{4^{s}}+...

と定義されています。自然数の逆数の累乗和で表されます。
この関数と素数はどのように関連しているのでしょうか?今回はそのことについてお話します。

(式1の左辺)-(式2の左辺)=(式1の右辺)-(式2の右辺)

 ζ(s)=1+\frac{1}{2^{s}}+\frac{1}{3^{s}}+\frac{1}{4^{s}}+...
の両辺に \frac{1}{2^{s}}をかけると
 \frac{1}{2^{s}}ζ(s)=\frac{1}{2^{s}}+\frac{1}{4^{s}}+\frac{1}{6^{s}}+\frac{1}{8^{s}}+...
となり、前の式から辺々を引くと、
 (1-\frac{1}{2^{s}})ζ(s)=1+\frac{1}{3^{s}}+\frac{1}{5^{s}}+\frac{1}{7^{s}}+...
となり偶数の項が消えます。さらに、この両辺に \frac{1}{3^{s}}をかけると、
 \frac{1}{3^{s}}(1-\frac{1}{2^{s}})ζ(s)=\frac{1}{3^{s}}+\frac{1}{9^{s}}+\frac{1}{15^{s}}+\frac{1}{21^{s}}...
となり、前の式から辺々を引くと、
 (1-\frac{1}{3^{s}})(1-\frac{1}{2^{s}})ζ(s)=1+\frac{1}{5^{s}}+\frac{1}{7^{s}}+\frac{1}{11^{s}}+...
となり2の倍数でなく3の倍数である項が消えます。

このようにして、次々と \frac{1}{p^{s}}(pは素数)をかけて、前の式から辺々を引くと最後には1だけが残り、
 ...(1-\frac{1}{7^{s}})(1-\frac{1}{5^{s}})(1-\frac{1}{3^{s}})(1-\frac{1}{2^{s}})ζ(s)=1
となるので、ゼータ関数
 ζ(s)=\frac{1}{(1-\frac{1}{2^{s}})(1-\frac{1}{3^{s}})(1-\frac{1}{5^{s}})(1-\frac{1}{7^{s}})...}
素数と1だけで表現することができるのです。

数をたくさん足すとどうなるだろう?|無限級数の収束/発散

【対象年次:中学一年~】

みなさんこんにちは!
中高生にも分かる数学のお時間です。

今回は「数をたくさん足していくとどうなるのか?」という疑問を解決するために、「無限級数」についてお話ししたいと思います。
"無限"の意味は大丈夫だと思いますが、"級数"の意味はちょっと分からない人もいるかもしれませんね。級数とは

「ある規則を持った数を並べたとき、それら一つ一つの足し算で作られた数」

と言うことができます。かなりかみ砕いて言ってますが分かりにくければ以下のような例を見てください。
例:
自然数を並べる
 1,2,3,4,...
これらを足し合わせる
 1+2+3+4+...
↑これが級数です。なんかふわっとした説明ですね汗
まあ、厳密な数学をやるわけではないのでこんなふわっとした感じでもたぶん大丈夫でしょう。

ということは"無限級数"は、かみ砕いて言えばこういうことになります。

「ある規則を持った数をとにかくたくさん(無限回)足し合わせたもの」

そして今回説明したいのがこの無限級数の"収束"と"発散"です。これは多分高校では数学Ⅲの範囲なのですが、おそらくなんとなく理解するだけなら簡単なはずなので説明します。

収束とは?
「無限級数(無限回の足し算)がある一定の値に近づき、それ以上は大きくならないこと」
発散とは?
「無限級数(無限回の足し算)がある一定の値には近づかず、どんどん大きくなっていくこと」

イメージしにくいですかね?このブログではできるだけ例を挙げて理解してもらうことをモットーとしているのでとりあえず例を挙げてみます。ここで注意してほしいことは、収束と発散は無限級数の状態を表すことだということです。無限級数が「収束」するか「発散」するか、というのは人間が「健康」なのか「病気」なのか、ということとちょっとだけ似ています。(わかりにくい例えだったらすみません...)

無限級数が収束するときの例:
 \frac{1}{2}+\frac{1}{4}+\frac{1}{8}+...
この値は1に近づいていきます。なぜそうなるの?と思う人は下の2つの説明からレベル別に選んで解説を見てください。

レベル1(数学Ⅱを学習していない人、数学が苦手な人)
正方形の折り紙を用意してください。
そしてまず一回折り紙を半分に折って、左半分を鉛筆かなんかで塗りつぶしてください。この部分の面積は元の折り紙の面積を1とすれば、ちょうど塗りつぶされた部分の面積は \frac{1}{2}になることがわかりますね。ではもう一回半分に折って塗りつぶされてない右半分の上部を塗りつぶしてください。新しく塗りつぶした部分の面積は \frac{1}{4}になります。さらにもう一回半分に折り、塗りつぶされていない部分の左半分を塗りつぶせば...その部分の面積は \frac{1}{8}になるはずです。これを繰り返していくと、塗りつぶされた部分の面積
 \frac{1}{2}+\frac{1}{4}+\frac{1}{8}+...
は折り紙の元の面積1に近づくはずですね。

レベル2(数学Ⅱを学習した人、数学が得意な人)
初項 \frac{1}{2},公比 \frac{1}{2}等比数列の第n項までの和は、
 \frac{1}{2}+\frac{1}{2^{2}}+...+\frac{1}{2^{n}}=\frac{\frac{1}{2}(1-(\frac{1}{2})^{n+1})}{1-\frac{1}{2}}=1-(\frac{1}{2})^{n+1} です。
この級数 n個のもの(ちゃんと言うならば"項")の足し算ですが、これを無限回の足し算(=無限級数)に変化させるには nをとてつもなく大きな数(無限)にすればよいということはなんとなくわかりますか? nを大きくすればするほどこの足し算の式はどんどん横に際限なく長くなっていきますよね。これが"無限級数"なのです。
では nをとてつもなく大きな数にしたら 1-(\frac{1}{2})^{n+1}はどうなるでしょうか?
 nがとてつもなく大きな数だとしたらおそらく (n+1)もとてつもなく大きいでしょう。ここで \frac{1}{2}を何回も何回も掛け続けたらどうなるか考えてみましょう。そうです。もちろんすごく小さな数になります。100回も掛けたらそれはもう0がいくつも続く小数になることは間違いありません。
 1-(\frac{1}{2})^{n+1}=1-0.0000000000...
では、こんなゴミみたいな数は無視してもそんなに変わらないですよね。ですから、この値はほぼ 1だということができます。よって、nをとてつもなく大きくする(無限にする)ことで、
 \frac{1}{2}+\frac{1}{2^{2}}+...\frac{1}{2^{n}}=1-(\frac{1}{2})^{n+1}
 ↓
 \frac{1}{2}+\frac{1}{4}+\frac{1}{8}+...=1

ということになるわけです。いや、例のくせに長かったですね。数Ⅲを学習した人なら読み飛ばして構わない部分ですねここは。

無限級数が発散するときの例:
こっちの方がイメージ的には理解しやすいです。例えば、
 1+2+3+...や、
 1+1+1+...は発散することがわかりますよね?
砂粒だって無限に集めたら砂粒の数は無限になります。
 \frac{1}{100}+\frac{1}{100}+\frac{1}{100}+...だって無限回足し合わせれば無限になります。

では、これはどうでしょうか?
 1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+...
「んー、どんどん小さくなるから収束?」
「いやいや無限回足してるんだから無限でしょ」
一体どちらの意見が正しいのでしょうか?これを解決するためにはちょっと工夫をしなければなりません。その前に一つ断っておきたい事実があります。

 「Aとそれより小さいBがあるとき、もしBが無限ならAも無限でしょう」

これは感覚的に理解しやすいですよね?
"無限"をテストの「合格」に例えると、Aくんより点数の低いBくんがテストに合格しているのならAくんだって合格しているはず、ということです。この例えはいらなかったかな?汗

では、ここで
 A=1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+...
としてみましょう。 Aは無限級数なので、問題は Aが収束するのか発散するのかということになります。

ここでもう一度 Aを書いてみましょう(今度はちょっとだけ長めに)。
 A=1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\frac{1}{5}+\frac{1}{6}+\frac{1}{7}+\frac{1}{8}+...
でも何をしたらいいのかさっぱりわからない...
じゃあちょっとだけAを改造しちゃいましょう。試しに \frac{1}{3} \frac{1}{4}に置き換えてみましょう。
 A=1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\frac{1}{5}+\frac{1}{6}+\frac{1}{7}+\frac{1}{8}+...

 1+\frac{1}{2}+\frac{1}{4}+\frac{1}{4}+\frac{1}{5}+\frac{1}{6}+\frac{1}{7}+\frac{1}{8}+...
さらに \frac{1}{5},\frac{1}{6},\frac{1}{7} \frac{1}{8}に置き換えてみます。
 1+\frac{1}{2}+\frac{1}{4}+\frac{1}{4}+\frac{1}{5}+\frac{1}{6}+\frac{1}{7}+\frac{1}{8}+...

 1+\frac{1}{2}+\frac{1}{4}+\frac{1}{4}+\frac{1}{8}+\frac{1}{8}+\frac{1}{8}+\frac{1}{8}+...
ん...もしかすると気づく人もいるかもしれません。この操作を繰り返し続けると、
 1+\frac{1}{2}+(\frac{1}{4}+\frac{1}{4})+(\frac{1}{8}+\frac{1}{8}+\frac{1}{8}+\frac{1}{8})+...
 =1+\frac{1}{2}+\frac{1}{2}+\frac{1}{2}+...
となります。このように改造した Aならば簡単に計算することができます。でもこの改造した Aはもはや Aではないので代わりに Bと呼ぶことにしましょう。
 B=1+\frac{1}{2}+\frac{1}{2}+\frac{1}{2}+...
この B Aと同じように無限級数ですよね。もちろん無限回足し算を行っているわけですから。そして Bは先ほど述べたような"発散"するタイプの無限級数です。
さて、少しここでこの改造について考えてみましょう。AからBに変化させるために行った改造はこのようなものでした。
 A=1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\frac{1}{5}+\frac{1}{6}+\frac{1}{7}+\frac{1}{8}+...

 B=1+\frac{1}{2}+(\frac{1}{4}+\frac{1}{4})+(\frac{1}{8}+\frac{1}{8}+\frac{1}{8}+\frac{1}{8})+...
このとき改造により変化させた Aの項(足し算で挟まれた数1つ1つのこと)は必ず Bの項より大きいことが見てわかりますね。
 Aの持つすべての項は Bのもつ項より必ず大きいということは、数として Aの方が Bより大きいということになります。ではここで先ほど断っておいた事実をもう一度思い出してみましょう。

 「Aとそれより小さいBがあるとき、もしBが無限ならAも無限でしょう」

確かに A Bよりは大きくて、さらに Bは発散し、無限大まで大きくなることがわかっていますのでこの事実を用いれば Aは無限となる、すなわち"発散"することがわかります。
これで
 1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+...
が発散するということがわかりました!これによってわかる1つの事実は、

 「項がどんどん小さくなっても無限級数は発散することがある」

ということです。項が増加、または一定の無限級数はもちろん発散しますが、  1+2+3+...=∞
 1+1+1+...=∞
項がどんどん減少する無限級数は発散するのか収束するのか簡単にはわからないということです。
 \frac{1}{2}+\frac{1}{4}+\frac{1}{8}+...=1(収束)
 1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+...=∞

ではここでもう一つある問題を考えてみましょう。
 1+\frac{1}{2^{2}}+\frac{1}{3^{2}}+\frac{1}{4^{2}}+...
はどうなるでしょうか?収束?発散?
答えは実は収束です。この値はある一定の値に収束することが知られています。
この無限級数が収束することは比較的簡単に証明することができるのですが、その値がどのような値であるかは昔の数多くの数学者たちを悩ませてきました。
この問題は"バーゼル問題"とも呼ばれ長い間謎のままでしたが、オイラーという天才数学者が解明したことが有名です。
ではこの値は一体どのような値に収束するのでしょうか?それは誰もが予想しない値だったのです。

 無限級数 1+\frac{1}{2^{2}}+\frac{1}{3^{2}}+\frac{1}{4^{2}}+... は、\frac{π^{2}}{6}に収束する

なぜか値には円周率が現れます。なぜ分数同士の足し算に円周率が出現するのでしょうか?不思議ですね!
どうしてこうなるかは、また他の記事で紹介したいと思います!

「中高生にも分かる数学」では数学が苦手な人にも非常に分かりやすい記事を心がけています。
他にもいくつか記事があるので、ご覧いただけると嬉しいです!
では、また他の記事でお会いしましょう!

円周率を自分で計算してみよう

【対象年次:中学一年~】

みなさん「円周率を計算して」と言われたらどうしますか?
円周率はπ=3.14…ということはお馴染みですが、意外と計算してと言われると「うーん」と悩んでしまう人もいるのではないでしょうか。
実際に東京大学の入試試験で
 円周率が3.05よりも大きいことを証明せよ
という問題が出題されました。
「…え、円周率は3.14だから大きいことは分かるけど、証明…?」「そもそも何をしたらいいかわからん…」
と思ってしまうかもしれませんが、そんなアナタのために今回は円周率の様々な計算方法を紹介していきたいと思います!

関数電卓で(正n角形の外接円)

ここではAndroidiPhoneスマホ電卓アプリで円周率 πを計算する方法を教えます!
まず、電卓アプリを開きます。
そして画面を回転させて普通電卓モードから関数電卓モードに切り替えます。
(たぶん画面回転で \sqrt{}や、 sin logなどが出てくると思います)
そして、以下のような式を入力します。

 □×sin(180÷□)

 sinは三角比といって高校一年で学びます。
後で軽く説明しますが、まだ履修していない方はとりあえず
 sin=\frac{(直角三角形の高さ)}{(直角三角形の斜辺の長さ)}
で計算できると思っておいてください!

ここで □には9を好きなだけ入れてもらうのですが、必ずどちらの □にも同じ数だけ9を入れてください。
例えば1こだけ9を入れてみた場合は、

 9×sin(180÷9)=3.0781812897...

となります。これが何?ともう人は一つずつ9の個数を増やしてみてください。6こも入れてみれば、なんと

 999999×sin(180÷999999)=3.1415926536...

もうほとんど円周率ですね!
この □に入れる数が大きいほどこの値は πに近づいていくようです。
(ちなみに □に入力する数は大きければなんでもよくて、9999…である必要はありません)


ではなぜこの式で円周率が計算できるのかを説明します!
それは、

 正多角形(正n角形)は角数が多くなる(nが大きくなる)と形が円に近づく

という性質があるからです。
実際に正多角形を書いてみると分かりやすいですが、

正3角形より正6角形が、正6角形より正12角形の方がより丸い形であることが分かりますよね。

f:id:exponential0805:20220211035001p:plain

そして、これをさらに詳しく言い換えると
 正n角形の外周はnが大きくなるほど、円周の長さに近づいていく
ということが言えます。

f:id:exponential0805:20220211035849p:plain

これは正12角形ですが、これを例に考えていきましょう!
正12角形の一辺の長さを a、それに外接する円(正12角形の全ての頂点を通る円です)の半径を rとします。
このとき赤い印が付いている部分の角度は360°を12等分しているので \frac{360°}{12}となります。

では、正12角形内部の「三角形の一つ」を取り出してみましょう。

f:id:exponential0805:20220211225902p:plain

ここで正12角形の中心を点O、その他の三角形の頂点をそれぞれ点A,点Bとします。
さらに点Oから線分ABへ垂直な補助線を引いて、それと線分ABの交点を点Hとします。

このとき、三角比を使ってarの関係式を導き出してみます!
まず、∠AOH∠AOBのちょうど半分なので
(正多角形の性質のおかげでこうなりますが、今回は厳密な証明を目的としているわけではないので割愛させていただきます)

∠AOH=\frac{1}{2}×∠AOB
∠AOH=\frac{1}{2}×\frac{360°}{12}
∠AOH=\frac{180°}{12}

となることが分かりますね!
ではここで三角比sinを使います。先ほども軽ーく説明しましたが、
 sin\frac{(直角三角形の高さ)}{(直角三角形の斜辺の長さ)}
で計算することができます。
上の図で考えると、「斜辺」にあたる部分は線分OA,「高さ」にあたる部分は線分AHですね。

…さあ、ここで「どこが『高さ』かなんて見る方向によって変わるやん」と思ったそこのアナタ!
素晴らしいです!!
全くその通りで sinなどの三角比を考えるときにはまず「直角三角形」の配置に着目することが非常に大事です。
具体的には必ず直角(∠AHO=90°)を右下、着目する角度(∠AOH)を左下に配置します。こうすることで間違いを大幅に減らせます!
では実際に数を当てはめてsinを計算してきましょう。

 sin(着目する角度)=\frac{(直角三角形の高さ)}{(直角三角形の斜辺の長さ)}
 sin∠AOH=\frac{(線分AH)}{(線分OA)}

∠AOH=\frac{180°}{12},線分OA=r,線分AH=\frac{線分AB}{2}=\frac{a}{2}なので、

 sin\frac{180°}{12}=\frac{\frac{a}{2}}{r}=\frac{a}{2r}

両辺に2rをかけて、

 a=2rsin\frac{180°}{12}

という式が出てきました。とりあえずこれはここまでで完成。
後で使うので覚えておいてくださいね!

そしてここでもう一度重要なことを思い出してください。

 正多角形(正n角形)は角数が多くなる(nが大きくなる)と形が円に近づく
↓
 正n角形の外周はnが大きくなるほど、円周の長さに近づいていく

そしてこの言葉による説明を数式化してみます。
まず正n角形はその一辺をaとすると辺の数はn個あるので、その外周の長さはnaと表されることは分かりますでしょうか?
そして円周の長さ。これは2×(円周率)×(半径)なので、外接円の半径をrとすれば、2πrとなります。

そして最も重要なのは、nが大きくなるほど「外周が円周に近づいていく」ということです。
これはnがある程度大きければ、

na≒2πr

と近似できることを示しているのです!
さあ、だいぶ答えに近づいてきましたね…!

ではここで先ほど導いたa,rの関係式(赤文字で書かれた式です)をこの近似式に代入してみましょう。
(ちなみにここでは例として正12角形を使っているのでn=12も代入しておきましょう!)
すると…

na≒2πr
12×2rsin\frac{180°}{12}≒2πr

両辺を2rで割ると、

π≒12sin\frac{180°}{12}

という関係式が得られました!!!
ただし、これはn=12のときの円周率の近似値で、精度はあまりよろしくありませんが…
(12sin\frac{180°}{12}=3.1058…)

これを正n角形で一般化すると、12の部分をnで置き換えればいいので、

π≒n×sin\frac{180°}{n}(ただしnが十分に大きいとき)

という、最初に電卓で計算した式が現れましたね!
例えば 999999×sin(180÷999999)は正999999角形の外周の長さで近似した円周率ということになるわけです!

ちなみに sinの代わりに tanを使っても同じように計算できます。
興味のある人は試してみると面白いかもしれません!

分数の足し算引き算で(ライプニッツの公式)

今度はもっと身近な数式を使って円周率を計算してみましょう。
このライプニッツの公式を使えば簡単な分数の足し算引き算で円周率の近似値を計算することができます!

 ライプニッツの公式
 π = 4×(1-\frac{1}{3}+\frac{1}{5}-\frac{1}{7}+\frac{1}{9}-\frac{1}{11}+\frac{1}{13}+…)

どうでしょう。
かなりめんどくさいとは言え、自分の手で計算できるレベルの数式ですね!

ではこの公式はどれくらいの精度で円周率を計算することができるのでしょうか?
ここでは僕がExcelを使って何回か計算してみました。

 第50項までの計算
 4×(1-\frac{1}{3}+\frac{1}{5}-\frac{1}{7}+…-\frac{1}{99})=3.121594…

小数点第一位までは正しいですね。でもまだまだ…

 第100項までの計算
 4×(1-\frac{1}{3}+\frac{1}{5}-\frac{1}{7}+…-\frac{1}{199})=3.131592…

まだ小数点一位は正しくないですが、さっきよりは近づいてます!

 第1000項までの計算
 4×(1-\frac{1}{3}+\frac{1}{5}-\frac{1}{7}+…-\frac{1}{1999})=3.140592…

一気に飛んで1000まで行きました。
ここまでくると小数点第二位まで精度が上がりました!

しかし、裏を返せばこの公式では1000回足し引きしないとこの精度にならないということです。
ライプニッツの公式はかなり精度が低い公式だと言えますね…!

ちなみにもっと精度の高いマチンの公式

 π = (\frac{16}{5}-\frac{4}{239})-\frac{1}{3}(\frac{16}{5^{3}}-\frac{4}{239^{3}})+\frac{1}{5}(\frac{16}{5^{5}}-\frac{4}{239^{5}})-…

は最初の3回計算するだけで値が 3.141621…と圧倒的に円周率に近づくのが早いです!
まあ、その分複雑ではあるんですけどね…( ;∀;)

分数の掛け算で(ウォリス積)

最後は分数の掛け算で円周率の近似値を計算する方法をお教えします! この公式は「ウォリス積」と呼ばれ、全ての自然数を使った掛け算のみで円周率を表すことができる奇妙な数式です。

 π=2×\frac{2}{1}×\frac{2}{3}×\frac{4}{3}×\frac{4}{5}×\frac{6}{5}×\frac{6}{7}×\frac{8}{7}×\frac{8}{9}…

という感じで、分子には必ず偶数、分母には必ず奇数が現れる分数の無限回の掛け算です。
なんかシンプルでどこか惹かれる公式ですよね…!
今回もどれくらいの精度で円周率を計算することができるのか、Excelを使って計算してみたのでご覧ください。

 2×\frac{2}{1}×\frac{2}{3}×\frac{4}{3}×…\frac{200}{199}×\frac{200}{201}=3.133787…

 2×\frac{2}{1}×\frac{2}{3}×\frac{4}{3}×…\frac{1000}{999}×\frac{1000}{1001}=3.140023…

 2×\frac{2}{1}×\frac{2}{3}×\frac{4}{3}×…\frac{2000}{1999}×\frac{2000}{2001}=3.140807…

という感じで掛け算をたくさん繰り返すほど、円周率に近づいていることが分かるかと思います!
精度としてはライプニッツの公式とどっこいどっこいと言ったところですかね~

さて、いかがでしたでしょうか?
円周率の計算方法を色々知ることによって、多少円周率に親近感が沸いたんじゃないかと思います!

他にもここでは紹介しきれないくらいたくさんの「円周率を求める方法」があります。
それだけ人類は「円周率」に強い関心があったんですね。
この記事を読んで少しでも円周率を自分で計算する方法について興味を持っていただけたらと思います。

「中高生にも分かる数学」では数学が苦手な人にも非常に分かりやすい記事を心がけています。
他にもいくつか記事があるので、ご覧いただけると嬉しいです!
では、また他の記事でお会いしましょう!