中高生にも分かる数学

他のサイトでよくある「数式で一般化した美しい数学」より「例題から理解してもらう親しみやすい数学」を目指しています。

数をたくさん足すとどうなるだろう?|無限級数の収束/発散

【対象年次:中学一年~】

みなさんこんにちは!
中高生にも分かる数学のお時間です。

今回は「数をたくさん足していくとどうなるのか?」という疑問を解決するために、「無限級数」についてお話ししたいと思います。
"無限"の意味は大丈夫だと思いますが、"級数"の意味はちょっと分からない人もいるかもしれませんね。級数とは

「ある規則を持った数を並べたとき、それら一つ一つの足し算で作られた数」

と言うことができます。かなりかみ砕いて言ってますが分かりにくければ以下のような例を見てください。
例:
自然数を並べる
 1,2,3,4,...
これらを足し合わせる
 1+2+3+4+...
↑これが級数です。なんかふわっとした説明ですね汗
まあ、厳密な数学をやるわけではないのでこんなふわっとした感じでもたぶん大丈夫でしょう。

ということは"無限級数"は、かみ砕いて言えばこういうことになります。

「ある規則を持った数をとにかくたくさん(無限回)足し合わせたもの」

そして今回説明したいのがこの無限級数の"収束"と"発散"です。これは多分高校では数学Ⅲの範囲なのですが、おそらくなんとなく理解するだけなら簡単なはずなので説明します。

収束とは?
「無限級数(無限回の足し算)がある一定の値に近づき、それ以上は大きくならないこと」
発散とは?
「無限級数(無限回の足し算)がある一定の値には近づかず、どんどん大きくなっていくこと」

イメージしにくいですかね?このブログではできるだけ例を挙げて理解してもらうことをモットーとしているのでとりあえず例を挙げてみます。ここで注意してほしいことは、収束と発散は無限級数の状態を表すことだということです。無限級数が「収束」するか「発散」するか、というのは人間が「健康」なのか「病気」なのか、ということとちょっとだけ似ています。(わかりにくい例えだったらすみません...)

無限級数が収束するときの例:
 \frac{1}{2}+\frac{1}{4}+\frac{1}{8}+...
この値は1に近づいていきます。なぜそうなるの?と思う人は下の2つの説明からレベル別に選んで解説を見てください。

レベル1(数学Ⅱを学習していない人、数学が苦手な人)
正方形の折り紙を用意してください。
そしてまず一回折り紙を半分に折って、左半分を鉛筆かなんかで塗りつぶしてください。この部分の面積は元の折り紙の面積を1とすれば、ちょうど塗りつぶされた部分の面積は \frac{1}{2}になることがわかりますね。ではもう一回半分に折って塗りつぶされてない右半分の上部を塗りつぶしてください。新しく塗りつぶした部分の面積は \frac{1}{4}になります。さらにもう一回半分に折り、塗りつぶされていない部分の左半分を塗りつぶせば...その部分の面積は \frac{1}{8}になるはずです。これを繰り返していくと、塗りつぶされた部分の面積
 \frac{1}{2}+\frac{1}{4}+\frac{1}{8}+...
は折り紙の元の面積1に近づくはずですね。

レベル2(数学Ⅱを学習した人、数学が得意な人)
初項 \frac{1}{2},公比 \frac{1}{2}等比数列の第n項までの和は、
 \frac{1}{2}+\frac{1}{2^{2}}+...+\frac{1}{2^{n}}=\frac{\frac{1}{2}(1-(\frac{1}{2})^{n+1})}{1-\frac{1}{2}}=1-(\frac{1}{2})^{n+1} です。
この級数 n個のもの(ちゃんと言うならば"項")の足し算ですが、これを無限回の足し算(=無限級数)に変化させるには nをとてつもなく大きな数(無限)にすればよいということはなんとなくわかりますか? nを大きくすればするほどこの足し算の式はどんどん横に際限なく長くなっていきますよね。これが"無限級数"なのです。
では nをとてつもなく大きな数にしたら 1-(\frac{1}{2})^{n+1}はどうなるでしょうか?
 nがとてつもなく大きな数だとしたらおそらく (n+1)もとてつもなく大きいでしょう。ここで \frac{1}{2}を何回も何回も掛け続けたらどうなるか考えてみましょう。そうです。もちろんすごく小さな数になります。100回も掛けたらそれはもう0がいくつも続く小数になることは間違いありません。
 1-(\frac{1}{2})^{n+1}=1-0.0000000000...
では、こんなゴミみたいな数は無視してもそんなに変わらないですよね。ですから、この値はほぼ 1だということができます。よって、nをとてつもなく大きくする(無限にする)ことで、
 \frac{1}{2}+\frac{1}{2^{2}}+...\frac{1}{2^{n}}=1-(\frac{1}{2})^{n+1}
 ↓
 \frac{1}{2}+\frac{1}{4}+\frac{1}{8}+...=1

ということになるわけです。いや、例のくせに長かったですね。数Ⅲを学習した人なら読み飛ばして構わない部分ですねここは。

無限級数が発散するときの例:
こっちの方がイメージ的には理解しやすいです。例えば、
 1+2+3+...や、
 1+1+1+...は発散することがわかりますよね?
砂粒だって無限に集めたら砂粒の数は無限になります。
 \frac{1}{100}+\frac{1}{100}+\frac{1}{100}+...だって無限回足し合わせれば無限になります。

では、これはどうでしょうか?
 1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+...
「んー、どんどん小さくなるから収束?」
「いやいや無限回足してるんだから無限でしょ」
一体どちらの意見が正しいのでしょうか?これを解決するためにはちょっと工夫をしなければなりません。その前に一つ断っておきたい事実があります。

 「Aとそれより小さいBがあるとき、もしBが無限ならAも無限でしょう」

これは感覚的に理解しやすいですよね?
"無限"をテストの「合格」に例えると、Aくんより点数の低いBくんがテストに合格しているのならAくんだって合格しているはず、ということです。この例えはいらなかったかな?汗

では、ここで
 A=1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+...
としてみましょう。 Aは無限級数なので、問題は Aが収束するのか発散するのかということになります。

ここでもう一度 Aを書いてみましょう(今度はちょっとだけ長めに)。
 A=1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\frac{1}{5}+\frac{1}{6}+\frac{1}{7}+\frac{1}{8}+...
でも何をしたらいいのかさっぱりわからない...
じゃあちょっとだけAを改造しちゃいましょう。試しに \frac{1}{3} \frac{1}{4}に置き換えてみましょう。
 A=1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\frac{1}{5}+\frac{1}{6}+\frac{1}{7}+\frac{1}{8}+...

 1+\frac{1}{2}+\frac{1}{4}+\frac{1}{4}+\frac{1}{5}+\frac{1}{6}+\frac{1}{7}+\frac{1}{8}+...
さらに \frac{1}{5},\frac{1}{6},\frac{1}{7} \frac{1}{8}に置き換えてみます。
 1+\frac{1}{2}+\frac{1}{4}+\frac{1}{4}+\frac{1}{5}+\frac{1}{6}+\frac{1}{7}+\frac{1}{8}+...

 1+\frac{1}{2}+\frac{1}{4}+\frac{1}{4}+\frac{1}{8}+\frac{1}{8}+\frac{1}{8}+\frac{1}{8}+...
ん...もしかすると気づく人もいるかもしれません。この操作を繰り返し続けると、
 1+\frac{1}{2}+(\frac{1}{4}+\frac{1}{4})+(\frac{1}{8}+\frac{1}{8}+\frac{1}{8}+\frac{1}{8})+...
 =1+\frac{1}{2}+\frac{1}{2}+\frac{1}{2}+...
となります。このように改造した Aならば簡単に計算することができます。でもこの改造した Aはもはや Aではないので代わりに Bと呼ぶことにしましょう。
 B=1+\frac{1}{2}+\frac{1}{2}+\frac{1}{2}+...
この B Aと同じように無限級数ですよね。もちろん無限回足し算を行っているわけですから。そして Bは先ほど述べたような"発散"するタイプの無限級数です。
さて、少しここでこの改造について考えてみましょう。AからBに変化させるために行った改造はこのようなものでした。
 A=1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\frac{1}{5}+\frac{1}{6}+\frac{1}{7}+\frac{1}{8}+...

 B=1+\frac{1}{2}+(\frac{1}{4}+\frac{1}{4})+(\frac{1}{8}+\frac{1}{8}+\frac{1}{8}+\frac{1}{8})+...
このとき改造により変化させた Aの項(足し算で挟まれた数1つ1つのこと)は必ず Bの項より大きいことが見てわかりますね。
 Aの持つすべての項は Bのもつ項より必ず大きいということは、数として Aの方が Bより大きいということになります。ではここで先ほど断っておいた事実をもう一度思い出してみましょう。

 「Aとそれより小さいBがあるとき、もしBが無限ならAも無限でしょう」

確かに A Bよりは大きくて、さらに Bは発散し、無限大まで大きくなることがわかっていますのでこの事実を用いれば Aは無限となる、すなわち"発散"することがわかります。
これで
 1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+...
が発散するということがわかりました!これによってわかる1つの事実は、

 「項がどんどん小さくなっても無限級数は発散することがある」

ということです。項が増加、または一定の無限級数はもちろん発散しますが、  1+2+3+...=∞
 1+1+1+...=∞
項がどんどん減少する無限級数は発散するのか収束するのか簡単にはわからないということです。
 \frac{1}{2}+\frac{1}{4}+\frac{1}{8}+...=1(収束)
 1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+...=∞

ではここでもう一つある問題を考えてみましょう。
 1+\frac{1}{2^{2}}+\frac{1}{3^{2}}+\frac{1}{4^{2}}+...
はどうなるでしょうか?収束?発散?
答えは実は収束です。この値はある一定の値に収束することが知られています。
この無限級数が収束することは比較的簡単に証明することができるのですが、その値がどのような値であるかは昔の数多くの数学者たちを悩ませてきました。
この問題は"バーゼル問題"とも呼ばれ長い間謎のままでしたが、オイラーという天才数学者が解明したことが有名です。
ではこの値は一体どのような値に収束するのでしょうか?それは誰もが予想しない値だったのです。

 無限級数 1+\frac{1}{2^{2}}+\frac{1}{3^{2}}+\frac{1}{4^{2}}+... は、\frac{π^{2}}{6}に収束する

なぜか値には円周率が現れます。なぜ分数同士の足し算に円周率が出現するのでしょうか?不思議ですね!
どうしてこうなるかは、また他の記事で紹介したいと思います!

「中高生にも分かる数学」では数学が苦手な人にも非常に分かりやすい記事を心がけています。
他にもいくつか記事があるので、ご覧いただけると嬉しいです!
では、また他の記事でお会いしましょう!