中高生にも分かる数学

他のサイトでよくある「数式で一般化した美しい数学」より「例題から理解してもらう親しみやすい数学」を目指しています。

モンテカルロ法による円周率πの求め方!!

【対象年次:中学二年~】

みなさんこんにちは!
中高生にも分かる数学のお時間です。

今回は確率的な円周率πの求め方、「モンテカルロ法」をご紹介いたします。
早速ですが、以下のような図形を考えてみましょう。

f:id:exponential0805:20220213154137p:plain

これは一辺4cmの緑色の正方形の内部に半径2cmの赤色の円が内接している図形です。

では、この一辺4cmの正方形の内部にランダムに点を打つとします。
このときその点が赤色の円の内部にある確率はどうなるでしょうか?

直感的に考えて、点は広い場所に打たれる確率が高く、狭い場所に打たれる確率は低いはずですよね。
それなら、点が「ある場所」に打たれる確率というのは「その場所」の面積に比例するということになるはずです。
これを踏まえて「ランダムに打たれた点が赤色の円の内部にある確率p」を考えると、

p = \frac{赤色の円の面積}{緑色の正方形の面積} = \frac{π×2cm×2cm}{4cm×4cm} = \frac{π}{4}

となることが分かります!
そしてこの「ランダムに打たれた点が円の内部にある確率p」に「円周率π」が含まれていることを利用して円周率の近似値を求めるのが「モンテカルロ法」なのです。

さて、p = \frac{π}{4}であることがわかりましたが、
この確率pを求めなければ円周率の近似値を求めることはできません。

ここで活躍するのがコンピュータシュミレーションです。

コンピュータシュミレーションにより一辺4cmの緑色の正方形の内部にランダムに点を打つことができます。
そしてその点がどこにあったのかを記録し、打った点の総数のうちどれくらいが円の内部にあったのかを求めます。
この点を打つ操作を100万回,1000万回,1億回,…と何回も何回も行うことにより
以下のように確率pおよびπの近似値を求めることが可能になるのです。
ここで、計算に用いる値が「点の個数」であることに注意してください!

\frac{赤色の円の内部にあった点の個数}{打った点の総数} ≒ p = \frac{π}{4}

\frac{赤色の円の内部にあった点の個数}{打った点の総数} ≒ \frac{π}{4}

π ≒ 4\times\frac{赤色の円の内部にある点の個数}{打った点の総数}

と、コンピュータシュミレーションで得られる値\frac{赤色の円の内部にある点の個数}{打った点の総数}から
円周率πの値の近似値を求めることができるわけです。

このように「モンテカルロ法」は確率を用いた面白い円周率の求め方です!
その他に確率を使って円周率を求める方法としては、罫線付きのノートに針を投げて円周率を求める「ビュフォンの針」という方法がありますが、これはまた機会があれば紹介したいと思います。
では、今回はここまでとなります。最後まで読んでいただきありがとうございました!

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他にもいくつか記事があるので、ご覧いただけると嬉しいです!
では、また他の記事でお会いしましょう!

エルデスシュトラウスの予想を証明!⑤(t=1定理)

エルデスシュトラウスの予想 今回はパート5になります。
前回も宣言しました通り、解形式(**)におけるt=1定理を証明したいと思います。
もしt=1定理が証明できれば解形式(**)はさらに簡単に書くことができて、

 (x,y,z)=(n^{t}rab,n^{t}rbc,rca)
↓
 (x,y,z)=(nrab,nrbc,rca)

となります。こうなれば素晴らしいですよね!
ではさっそくt=1であることを証明していきます!

まず、エルデスシュトラウスの予想の解となる場合、
\frac{4}{n} = \frac{1}{x} + \frac{1}{y} + \frac{1}{z}
すなわち
4xyz=n(xy+yz+zx)
となる必要があります。

ここで、n=24k+1型の素数と限定すると、解形式(*)(**)が使用できるのでした。(パート1参照)
これに解形式(**)を代入して式を整理すると
 (x,y,z)=(n^{t}rab,n^{t}rbc,rca)なので
4n^{t-1}rabc=n^{t}b+c+a
となります!(省略しているので自分で代入して計算してみてください!)

さてここで両辺のn^{t-1}に対する合同式を考えてみましょう。
言い換えれば両辺のn^{t-1}に対する余りを考えようということですね!
このとき、4n^{t-1}rabcおよびn^{t}bn^{t-1}の倍数(n^{t-1}を因数に含む)なので、
4n^{t-1}rabc≡0 (modn^{t-1})
n^{t}b≡0 (modn^{t-1})
となりますよね。(合同式忘れてしまった人はパート2,3を見直してください!)

というわけで、
4n^{t-1}rabc=n^{t}b+c+a
0=0+c+a (modn^{t-1})
c+a≡0 (modn^{t-1})
という結果が得られます!この結果を解析してみましょう。

実際このc+aという値はどれくらいの大きさなのでしょうか?
もしこの値が素数nを越えられないようなら、その累乗n^{t-1}で割り切れるということはおかしなことです。
もっと分かりやすく説明しましょうか。
素数の定義を考えれば、ある素数nはそれより小さな数とはすべて「互いに素」であるはずですね。
ということは素数nより小さな自然数c+aがnで割り切れる(すなわち、c+aがnの倍数)ということはありえないはずなのです。
よく考えてみてください、例えばn=73(素数)のとき73の倍数は73,146,219,…となるはずですね。
73より小さな数が73の倍数であるはずがありません!

この考えからc+aがnに対してどれ位の大きさなのかを評価していきましょう!

さて、話は少し変わりますがx,y,zとnの大小関係はどのようになるでしょうか?
ここでは仮にx,y,zがどれもn以上としてみます。このとき、

x≥n        \frac{1}{x}≤\frac{1}{n}
y≥n  すなわち  \frac{1}{y}≤\frac{1}{n}
z≥n        \frac{1}{z}≤\frac{1}{n}

なので、この両辺をすべて足し合わせると

\frac{1}{x}+\frac{1}{y}+\frac{1}{z}≤\frac{1}{n}+\frac{1}{n}+\frac{1}{n}

となりますが、実はこれはおかしな矛盾が起こっています!
エルデスシュトラウスの予想の解になるならば、
\frac{4}{n} = \frac{1}{x} + \frac{1}{y} + \frac{1}{z}
である必要がありますが、先ほど得られた不等式と合わせると

\frac{4}{n}=\frac{1}{x}+\frac{1}{y}+\frac{1}{z}≤\frac{1}{n}+\frac{1}{n}+\frac{1}{n}=\frac{3}{n}
\frac{4}{n}≤\frac{3}{n}

あれ?おかしいですよね。
nが自然数なら明らかに右辺は左辺より小さいはずで、これは矛盾です。
よって「x,y,zがどれもn以上」という仮定が間違っていて、

「x,y,zのどれかはnより小さい」

という理論が導けるのです。
さて、問題はx,y,zのどれがn未満であるかということですが、解形式(**)をみれば一目瞭然です!

 (x,y,z)=(n^{t}rab,n^{t}rbc,rca)

t自然数でしたので、x,yはともにnの倍数であることがわかります。
もちろんさきほども述べたように、nの倍数はn以上でなくてはなりません。
よってnの倍数であるx,yは
x≥n,y≥nとなることが理解できますね!

ならば、n未満となるのはzであるということも同時に分かります。

z=rca < n
rcaおよびnが自然数ということを考慮し、等号付きの不等号に変形して
z=rca ≤ n-1…式①
(自然数の範囲で考えるとn未満ということはn-1以下と同じ意味ですよね!)

さて、今何を知りたいのかというとc+aの最大値でした。
このaとcの和を最大にしたい場合a,cの値自体が大きくなくてはいけませんよね?
なので、aとcの積の不等式である式①におけるa,cを最大となるようにとればいいことが分かります。
もし仮にrが大きくなっていくとその分、積caの値が減っていくので
rはできるだけ小さいほうがいいですよね。よって、
r=1
ということが分かり、これを式①に代入して
ca ≤ n-1…式②
aは自然数なのでaで両辺を割ると、
c ≤ \frac{n-1}{a}
さらに両辺にaを足して、
c+a ≤ \frac{n-1}{a}+a…式③
が得られます。

この右辺はnを定数として考えるとaの関数になっていることが分かるので、
f(a)=\frac{n-1}{a}+a
と置きこの最大値を求めることで結果的にc+aの最大値を求めることにします!

※このf(a)の最大値を求めるのに微分を用いますので、数Ⅲを履修していないと厳しいところがありますが、ある程度のところまではわかるように解説するので頑張ってみてください!
微分については数Ⅱで習う範囲は深くは説明していないのでご了承ください。

まず、f(a)微分してみましょう。
k自然数のとき
x^{k}を微分するとkx^{k-1}
となることが知られていますが実はコレ、
kが整数のときにも成り立つ式だということを数Ⅲで学ぶことができます。
(実際にはkが実数の範囲まで成り立ちますが、ここでは使いません)
これを利用すると、

 (\frac{1}{a})'=(a^{-1})'=(-1a^{-2})=\frac{-1}{a^{2}}

であることがわかりますので、

f(a)=\frac{n-1}{a}+a
f'(a)=-\frac{n-1}{a^{2}}+1

となります。
ここから数Ⅱで習う3次関数の微分と同じ要領で
f'(a)=0となるaの値と、f(a)の増減表を書いていきましょう。

f'(a)=0とすると、

-\frac{n-1}{a^{2}}+1=0
なので、式を整理すると
a^{2}=n-1
aは正の値なので、
a=\sqrt{n-1}
となりますね!

増減表は以下の通りになります。
(aの範囲について詳しく話していませんでしたが、
aは自然数なので最小値は1、式②より最大値はn-1となります!)

a     1  …  \sqrt{n-1} … n-1
f'(a) (2-n)  -    0   +  1-\frac{1}{n-1}
f(a)   n  ↘ 2\sqrt{n-1} ↗  n

さて、この増減表を参考にすると
f(a) a=1, n-1 (グラフの両端)のとき最大値nをとるということが分かります。
ということは
f(a)≤n
であり、式③より、
c+a ≤ \frac{n-1}{a}+a = f(a) ≤ n
これをまとめると、
c+a ≤ n…式④
というa,cの和に関する不等式が得られました!
これによりc+aという値はn以下であることが判明したのです!

ここでさらに前に戻って式を確認してみましょう。
解形式(**)において
4n^{t-1}rabc=n^{t}b+c+a
が成立し、n^{n-1}に対する余りを考えて、
c+a≡0 (modn^{t-1})
という式が得られたのでした。
この式の意味を言葉で表すと、
「c+aはn^{t-1}の倍数」
となり、これと式④c+a ≤ nを合わせて考えるとtの範囲を限定できます。

ここで、t=3としてみましょう。
このときc+an^{2}の倍数ということになりますが、ここで思い出してください。

ある自然数Nの倍数はN以上の数である

という性質から、c+an^{2}の倍数なので
c+a ≥ n^{2}…式⑤という不等式が得られますが、実はこれはおかしな状況になります。

なぜなら1以外のすべての自然数nにおいて
n < n^{2}が成立するので、式⑤と合わせると

 c+a ≥ n^{2} > n すなわち、
 c+a > n

が得られますが、これは式④と矛盾するからです!
式④( c+a ≤ n)と式⑤から得られる式( c+a > n)はもちろん同時に成立しないからですね!!
式④は正しいはずなので式⑤が間違っていることになります。
そして間違っている式⑤を導いたt=3という仮定が間違っているということになりますね。

さらにt=4,5,6,…と増やしていってもt=3と同じように式④と矛盾した式が得られてしまいます…
(省略してますが、気になる人は自分で試してみてくださいね!)

これにより
t≥3ではない、すなわちt=1,2
という条件に絞り込むことができるのです!

あとはラストスパートです!
式④の条件式
 c+a ≤ n
 c+a = n…条件A
 c+a < n…条件B
の2つに分解して考えてみましょう。

条件Aのときt=1とt=2の場合があります。
t=1のとき、解形式(**)の等式
4n^{t-1}rabc=n^{t}b+c+a
にt=1および条件Aのc+a=nを代入すると、 n^{1-1}=n^{0}=1なので
4rabc=nb+n
4rabc=n(b+1)
となります。
右辺はnの倍数ですが、前回の記事(パート4)で紹介した
「nが24k+1型の素数ならば、a,b,c,rはすべてnとは互いに素]
という事実を用いれば、左辺はnとは互いに素である→nの倍数ではないということがわかりますね!
というわけで、等式の左辺はnの倍数ではなく、右辺はnの倍数という矛盾が生じるので条件Aにおけるt=1の場合はあり得ないということになるのです!

また条件Aにおけるt=2の場合についても考えてみましょう。
解形式(**)の等式
4n^{t-1}rabc=n^{t}b+c+a
にt=2およびc+a=nを代入すると、
4nrabc=n^{2}b+n
両辺をnで割って、
4rabc=nb+1
さらに移項して整理して、
(4rca-n)b=1
ここで、4rca-nb自然数で、両者の積が1となる場合は
4rca-n=1
b=1
の場合しかありません。(1×1=1しかありませんね!)
4rca-n=1に着目します。
まずnを移項して
4rca=n+1
ここで、n=24k+1型の素数なのでこれを代入して
4rca=24k+2
ここで両辺の4で割ったときの余りを考えると、
左辺では4の倍数なので0、右辺では2が余ることになります。
これもこの等式に矛盾があることを示していますね!(両辺の余りが等しくないときにはその等式に矛盾がある)

よって条件Aのt=1の場合とt=2の場合はどちらも矛盾がありアウト!
ということで条件Bのみが残りました。 条件Bは c+a < nとのことですが、このときc+aはn未満の自然数となるのでもちろんnの倍数にはなり得ません。
ということは、
c+a≡0 (modn^{t-1})
に矛盾がないようにするにはt≥2ではいけないのでt=1という結果が導かれるのです!!

まとめると、
解形式(**)はt=1定理により、

 (x,y,z)=(n^{t}rab,n^{t}rbc,rca)
↓
 (x,y,z)=(nrab,nrbc,rca)

と書き直すことができ、解はn,r,a,b,cだけの式で記述することができることが分かったということです!

例としてn=73(24k+1型の素数)のときの(**)形式の解を1つ求めてみましょう。
解の探索方法はこれからの記事でご紹介いたしますので、今は下のような式が見つかった前提でお話しますね。
\frac{4}{73}=\frac{1}{73\times 2\times 5}+\frac{1}{73\times 2\times 2}+\frac{1}{2\times 2\times 5}
このとき、
 (x,y,z)=(nrab,nrbc,rca)=(73\times 2\times 5, 73\times 2\times 2, 2\times 2\times 5)
なので、
 (r,a,b,c)=(2,5,1,2)
となることがわかります。
このときちゃんとa,b,cが互いに素であることも分かりますよね。

さて、これまでは「解の構造」を調べてきましたが次回以降の記事では「解の見つけ方」を紹介しようと考えています。
思った以上にこのエルデスシュトラウスの予想の解は多く存在していることが分かっていただけるだろうと思います!

では、また次回の記事で会いましょう!

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次数下げと方程式|計算を楽にするテクニックを解説!!

【対象年次:中学三年~】

みなさんこんにちは!
中高生にも分かる数学のお時間です。

今回は中学生でも理解できる面白い計算のコツを解説したいと思います。
さて次のような二次方程式を考えてみましょう。

x^{2}+3x-5=0

本当に簡単な二次方程式ですね。
解の公式を使えば、

x=\frac{-3±\sqrt{3^{2}-4\times(-5)}}{2} = \frac{-3±\sqrt{29}}{2}

となることがわかりますね。
ではこの解のうち大きいものをαとしましょう。すると、

 α=\frac{-3+\sqrt{29}}{2}

となりますよね。(-よりも+の方が大きいですね)
ではこのαを2乗,3乗,4乗,…するとどのような数になるかわかるでしょうか?

「そんなもの計算すればわかる」ですって?
確かにその通りですがかなりα自体が複雑なので計算ミスしそうですよね…
では、α^{2},α^{3},α^{4},…を簡単に計算する方法について考えてみましょう。

まずα2次方程式
x^{2}+3x-5=0
の解であるということで、x=αを代入しても方程式は成り立ちます。

α^{2}+3α-5=0

では移項して次のような式に変形できますね。

α^{2}=-3α+5

なんと、このように変形することでα^{2}αを2回かけるというめんどくさい計算なしに求めることができるようになりました!
このようにα^{2}αだけの式に書き換えることを「次数下げ」といいます。

では、次はα^{3}についてはどうでしょうか?

さきほど得られた式
α^{2}=-3α+5
の両辺にαをかけてみましょう。
α^{3}=-3α^{2}+5α
この式の右辺にさらにα^{2}=-3α+5を代入してみましょう。
α^{3}=-3(-3α+5)+5α
α^{3}=9α-15+5α
α^{3}=14α-15
となります。
驚くことに、α^{3}αの一次式(最大次数が1の式ということです)になりました!

ということはα^{4}も…?
α^{3}=14α-15
の両辺にαをかけると、
α^{4}=14α^{2}-15α
同じくこの式の右辺にα^{2}=-3α+5を代入すると
α^{4}=14(-3α+5)-15α
α^{4}=-42α+70-15α
α^{4}=-57α+70

…やっぱりα^{4}αの一次式になりました!
α^{2},α^{3},α^{4},…と累乗の指数が大きくなるにつれて右辺の式は複雑になっていきますが、
これを繰り返すと5乗,6乗,…についてもαの一次式で書けることがわかりますね。
この操作によってα^{n}αの1次式まで次数を下げることができるわけです!

というわけで分数,無理数を含む複雑な実数の累乗を簡単に計算する「次数下げ」という方法についてでした。

「中高生にも分かる数学」では数学が苦手な人にも非常に分かりやすい記事を心がけています。
他にもいくつか記事があるので、ご覧いただけると嬉しいです!
では、また他の記事でお会いしましょう!

エルデスシュトラウスの予想を証明!④(解形式ラスト)

今回はパート4、前回まで解説してきた「解形式」の解説は今回が最後となります。
さっそく前回の復習から始めましょう。
前回は解形式(*),(**)におけるα,β,γの関係性について調べていた途中で終わっていましたね。これは前回の記述です。

「αがもつ因数はすべてβかγがもっている」...(A)
「βがもつ因数はすべてγかαがもっている」...(B)
「γがもつ因数はすべてαかβがもっている」...(C)

こんなことを言っていたのを覚えてますか?これである程度α,β,γの関係性を見出すことができたのでしたね。
では今回は解形式ラストということでさらに掘り下げていきたいと思います。

(A)の記述から見ていきたいと思います。

「αがもつ因数はすべてβかγがもっている」...(A)

この記述から分かるαの因数の種類は3つあることになります。
重要なことはαが持つ因数はβかγのどちらかが持っている、ということです。
αのみが持つ因数は存在しません。

まず1つは「βだけが持っている因数」が考えられます。βかγが持っているということだったので、βだけが持っている因数があっても(A)と矛盾はありませんよね??
同じ理由で「γだけが持っている因数」も考えられますね。
そして3つ目に考えられるものは「β,γがどちらも持っている因数」です。やはりこれにも(A)の条件とは矛盾がないです。

というわけで、条件(A)から導かれるのは、
α=(βだけが持つ因数)\times(γだけが持つ因数)\times(β,γどちらも持つ因数)

そのほかの(B),(C)の条件について考えるとβやγもαのように3つの自然数の積で書けるような気がしますね!
条件(B)から得られる式:
β=(γだけが持つ因数)\times(αだけが持つ因数)\times(γ,αどちらも持つ因数)
条件(C)から得られる式:
γ=(αだけが持つ因数)\times(βだけが持つ因数)\times(α,βどちらも持つ因数)

この3つの条件式から新たな文字を使ってα,β,γを表すことができるわけですが、
このまま言葉で説明してもわかりづらいので、

因数集合
という概念を使って図的に説明していきたいと思います!

「因数集合」はある自然数nの素因数を要素にもつ集合のことで、
もちろんその要素すべての積(ここではこれを集合の全積と呼びます)は自然数nと等しくなります。
数式で表すと
自然数nを素因数分解すると
 n=p_1^{n_1}\times p_2^{n_2}\times p_3^{n_3}\times…
となるとき、その因数集合の要素は
 n_1個のp_1,n_2個のp_2,n_3個のp_3,…
となります。
この要素の全積はもちろん
p_1をn_1回、p_2をn_2回、p_3をn_3回、…と掛け合わせるので、
 p_1^{n_1}\times p_2^{n_2}\times p_3^{n_3}\times…=nになるわけですね!…

…よくわかりませんね(笑)
僕がエルデスシュトラウスの予想を理解するために考えた概念なので、学校でも習いませんし、
よく分からなくて当然だと思います。
しかし、そこで諦めてしまっては面白くないので例を挙げて理解してみましょう。

もちろん理解が苦しいと思ったら最後まで読み飛ばしてもらっても構いません!
因数集合の概念から得られた結果のみを最後にきれいにまとめて示しておくので大丈夫です!

例題>>
自然数30,50,42について因数集合をベン図に表してみよう

f:id:exponential0805:20190323023813p:plain

こんな感じになります。
※ここからは集合の概念を習ってない高校1年生以下の人は記号が理解しにくいと思いますが、 ご了承ください。

まず、それぞれ素因数分解すると30=2\times 3\times 5, 50=2\times 5^{2}, 42=2\times 3\times 7となりますね。
30,50,42における最大公約数が2なので真ん中のすべてに共通する部分に2があります。
また、30と50の最大公約数は10なので30の因数集合と50の因数集合の共通部分(30⋂50)の全積は10となり、
そこから42の因数集合を除いた集合(30⋂50)/42の全積は5となります。
同様に(30⋂42)の全積は6となり、(30⋂42)/50の全積は3となります。

ここで気づくのが「因数集合(〇⋂▢)の全積は〇,▢の最大公約数になっている」ということですね!
そしてもう一つ気づくのが「因数集合(〇⋂▢)/△の全積は〇,▢の最大公約数の素因数のうち△とは互いに素であるもののみを掛け合わせたもの」ということです。

では(50⋂42)の全積と(50⋂42)/30の全積はどうなるでしょうか?
前者はもちろん50と42の最大公約数なので2ということが分かります。
そして後者は50と42の最大公約数のうち30と互いに素であるもの…はないですねw
このとき全積は「1」であると定義します。これはその集合には要素となる素因数はないということを表しています。
ベン図を見ても分かるようにその部分の全積は1であると表記されていますね!

最後に因数集合のうち重ならない部分の全積も考えようと思います。
まず30のみがもつ素因数はないので1、42のみがもつ素因数は7なので7がそれぞれ全積として書いてあります。
では50のみがもつ素因数の部分はどうでしょう?5が書いてありますね。
あれれ?でも5は30も素因数として持ちますから、この5は間違いなのではないかという考えが浮かびますよね?
しかし、僕が考えた因数集合の概念ではこれは正しいことになります。
なぜなら、50が持つ素因数のうち5は2つありますが、その片方の5は(30⋂50)に持っていかれています。このとき、この2つの5は区別されて
「50と30の共通因数としての5」と「50のみが持つ素因数としての5」に分けられるのです。

…というわけで因数集合の概念については多少理解していただけたでしょうか?
そしてここからはエルデスシュトラウスの予想を解くためにこの概念を応用していきたいと思います。

まず条件(A)(B)(C)から得られる式は以下の3つでした。

α=(βだけが持つ因数)\times(γだけが持つ因数)\times(β,γどちらも持つ因数)
β=(γだけが持つ因数)\times(αだけが持つ因数)\times(γ,αどちらも持つ因数)
γ=(αだけが持つ因数)\times(βだけが持つ因数)\times(α,βどちらも持つ因数)

このとき、このα,β,γが持つ因数集合は以下のようなベン図で表されることが分かります。

f:id:exponential0805:20190323034152p:plain

(画像の関係上見づらいですが、右上がα、左上がβ、下がγです)
これは、いったいどういうことなのでしょうか?

これはこのような文字の置き換えで説明されます。
(γの因数のうちαだけが持つ因数)=(αの因数のうちγだけが持つ因数)=((γ⋂α)/βにおける全積)=a
(αの因数のうちβだけが持つ因数)=(βの因数のうちαだけが持つ因数)=((α⋂β)/γにおける全積)=b
(βの因数のうちγだけが持つ因数)=(γの因数のうちβだけが持つ因数)=((β⋂γ)/αにおける全積)=c
(α,β,γが持つ共通因数)=(α,β,γの最大公約数)=((α⋂β⋂γ)における全積)=r

このように置き換えたとき、α,β,γは以下のように表すことができるでしょう。

 α=(βだけが持つ因数)\times(γだけが持つ因数)\times(β,γどちらも持つ因数) = b\times a\times r = rab
 β=(γだけが持つ因数)\times(αだけが持つ因数)\times(γ,αどちらも持つ因数) = c\times b\times r = rbc
 γ=(αだけが持つ因数)\times(βだけが持つ因数)\times(α,βどちらも持つ因数) = a\times c\times r = rca

さらに、以下のような条件が追加されます。
 a,b,cはすべて互いに素 = a,b,cの最大公約数は1
(これはα,β,γの最大公約数rに共通因数が全て吸い取られている、というイメージをすると理解できるかもしれません)

…どうでしょうか。
多分ここはかなり難しい部分かもしれません。
ここを言葉で分かりやすく説明する自信があまりないというのが正直なところです。
新しい概念の話ですからね( ;∀;)

さて、これによって分かったことが以下の通りになります。
前回の記事の復習も絡めたいと思います!


エルデスシュトラウスの予想の解の形式は以下の2通りある。

 (x,y,z)=(nα,β,γ)...(*)
 (x,y,z)=(n^{t}α,n^{t}β,γ)...(**)

このときのα,β,γの構造は(*)(**)でともに同じで、


βγ ≡ 0(modα)

γα ≡ 0(modβ)

αβ ≡ 0(modγ)

と表される。(modは前回記事で深く説明/余りを考える演算でした)
これを解析すると、
最大公約数が1となるようなa,b,cを用いて

 α=rab
 β=rbc
 γ=rca

と書けるため、解の形式はさらに以下のように書き下すことができる。(解形式に代入)

 (x,y,z)=(nrab,rbc,rca)...(*)
 (x,y,z)=(n^{t}rab,n^{t}rbc,rca)...(**)


はい、どうでしょうか?
「因数集合」やベン図がよくわからなかったよ、って人はここだけ覚えて次の記事以降にトライしてみてください!
ここを乗り切れば、あとはまたみんなが知っている概念で話を進めていけると思います!

あと、どこかで使うかもしれないので一応説明しておくと、実は

nが素数ならば (n,a)=(n,b)=(n,c)=(n,r)=1(a,b,c,rはすべてnとは互いに素)

が成立します。

前回の記事でも述べたように(n,α)=(n,β)=(n,γ)=1であるわけで、
αを例にとって考えると
α=rabと表せるから、nがαと互いに素ならばαはnを因数に持つはずはなく、そのαの因数であるr,a,bももちろんnを因数に持つはずがないのです。
これをβ、γも同様に考えれば理解できそうですね!

さて、今回はここらへんで終わりにしたいと思います。
そして次回は解形式(**)におけるnの累乗の指数tが邪魔なので、これが1であるということを証明したいと思います。
もちろんこれを証明するためには今回の記事が重要なのでしっかりと覚えてから望んでくださいね!

では、また次の記事でお会いしましょう~

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エルデスシュトラウスの予想を証明!⑥「z差分法」と解の存在域

エルデスシュトラウスの予想に関する記事もこれで6つ目になります。
今回は「z差分法」という方法を用いてエルデスシュトラウスの予想の解を見つけていきたいと思います。

まず「z差分法」とは何かと言いますと、

エルデスシュトラウスの予想の解が満たしうる条件
\frac{4}{n} = \frac{1}{x} + \frac{1}{y} + \frac{1}{z}
を変形して、
\frac{4}{n} - \frac{1}{z} = \frac{1}{x} + \frac{1}{y}
とすることです。

この\frac{1}{z}で差をとることから「z差分法」です。
じゃあなんでzなの?x,yとかでもよくない?!
という意見がありますが、ちゃんとzである理由があるのです。

前回の記事をすでに見ている方は大丈夫ですが、まだ見ていない方はぜひご覧ください。

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この記事にも書いてありますが、(**)の解形式におけるzx,y,zのうち「最小」の数であるとのことでした。
これはすなわち、(**)の解形式において、\frac{1}{x},\frac{1}{y},\frac{1}{z}のうち「最大」であるのは\frac{1}{z}であるということが言えるのです。
そして、この3つの分数のうち最大である\frac{1}{z}を引いてあげることで、効率よく\frac{4}{n}の大きさを減らしてあげることができるのです!

じゃあ、効率よく減らせることが何の利点になるのかというと、それはこれからする説明を理解してもらう必要があります。
ここで「z差分法」を行った左辺を計算していきましょう。

\frac{4}{n} - \frac{1}{z} = \frac{1}{x} + \frac{1}{y}
\frac{4z-n}{nz} = \frac{1}{x} + \frac{1}{y}

となりますね。
ここでx,yが自然数であることを考えると、(右辺)が正の値であることが分かるので、
同時に(左辺)が正の値であることも分かります。
もちろんn,zも自然数なので

4z-n >0
4z >n

ここでn=24k+1型の素数ということに注意すると、

4z >24k+1
z >6k+\frac{1}{4}

となりますね!
また、zが自然数であることに注意して不等式を書き換えると、

z ≥6k+1

となります。
この変形は前回の記事でも行っていますね。
6k+\frac{1}{4}より大きく最小の自然数6k+1という考えからこの変形を行うことができるのです。
また、前回記事の式①
z ≤ n-1
n=24k+1を代入して、

z ≤ (24k+1)-1
z ≤ 24k

となることが分かります。
以上2つの結果により、

6k+1 ≤ z ≤ 24k

となることが分かり、
エルデスシュトラウスの予想が成立するためのzの値の範囲が決定されます。
ここから理解できるように、zが3つの数の中で「最小」であるため、
このエルデスシュトラウスの予想が成立する解の存在域も「最小」に設定することができるのです!
もしこれがxyの不等式だと範囲はもっと広くなってしまうでしょう。

考えなくてはいけない範囲が減るので、もちろんこの「解の存在域」は狭い方がよいということになります。
これでさきほどの
なぜ「z差分法」なのか
という理由が理解できると思います!

さて、これで一段落…
と思ったのもつかの間、実はこのzの上限、(**)の解形式においてはもっと縮めることができるのです!
前回はz ≤ n-1と紹介しましたが、実際のznよりもっと小さな数なのです!
今からそれを証明しましょう。

っと、その前に準備として次のような定理を紹介しましょう。

<特殊単位分数定理>
仮分数であるような分数\frac{A}{B}(>1)において
\frac{A}{B}=\frac{1}{p}+\frac{1}{q}(p,qは自然数)と2つの単位分数に分解するとき、そのどちらかは1である

この定理は特別難しくはなく、割と簡単に理解できると思います。
おなじみの背理法で証明してみましょう。

仮に\frac{1}{p}\frac{1}{q}も1ではない、すなわちp≥2,q≥2と仮定しましょう。
このとき右辺の最大値は\frac{1}{p}\frac{1}{q}がそれぞれ\frac{1}{2}になるときで、その値は
\frac{1}{p}+\frac{1}{q}=\frac{1}{2}+\frac{1}{2}=1
となりますね。しかし、左辺は仮分数すなわち1より大きい数ということでした。
どれだけ頑張って右辺を大きくしようとしても、左辺に届くことはありません。
これは矛盾ですね!
よって、上記の定理が正しいことが分かります。

さて、話はかなり戻りますが、「z差分法」を用いて得られた式
\frac{4z-n}{nz} = \frac{1}{x} + \frac{1}{y}
の左辺の大きさについて評価してみましょう。

解形式(**)においては
x=nrab,y=nrbc
となるので、これを代入すると、

\frac{4z-n}{nz} = \frac{1}{nrab} + \frac{1}{nrbc}
両辺にnをかけて、
\frac{4z-n}{z} = \frac{1}{rab} + \frac{1}{rbc}
となることがわかりますね!
ここで先ほどの<特殊単位分数定理>を用いてみましょう!

もし、\frac{4z-n}{z} >1ならば、\frac{1}{rab}および\frac{1}{rbc}のどちらかは1と等しい

では、\frac{4z-n}{z} >1のときrab=1としてみましょう。
このときr,a,bはすべて自然数なのでr=a=b=1となることがわかります。
(自然数同士の積が1となる場合は1×1×1×…=1しかありえません!)
これを(**)の解形式が満たす式
4rabc=nb+c+a  ※解形式(**)を代入すると得られます
に代入してみましょう!

r=a=b=1とすると、
4c=n+c+1
n=24k+1を代入し、式を整理すると、
3c=24k+2
となりますが、左辺は3の倍数であるのにも関わらず右辺は3で割って2余る数になっています。
両辺の余りが一致していないので、この式は矛盾を含むことになります。

よって矛盾した式を導くもとの仮定が間違っているということになります。
もしrbc=1とした場合でもこれはacを入れ替えただけになり、
3a=24k+2という式が得られて結局おかしくなるので、さらにもとの条件

\frac{4z-n}{z} >1
が間違っていることとなり、さらにこの分数は1になることはないので

\frac{4z-n}{z} <1

という結果が得られますね!
さらにこれを変形して、

4z-n <z
3z <n

ここにn=24+1を代入して、

3z <24k+1
z <8k+\frac{1}{3}
z ≤8k

という結果が得られますね!
この素晴らしい結果を考慮すると解の存在域は次のように書き換えることができます。

解形式(**)において、 6k+1≤ z ≤ 8kとなる範囲にしか解は存在しない

さっきの式よりはだいぶ範囲が狭くなりましたよね!
…しかし、これで満足する私ではありません。
まだ貪欲にもう少しだけ範囲を狭めることができるのです。
それについてはまた次回以降ご紹介いたします!

では、また次の記事でお会いしましょう!

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無限大は実数?|無限の厄介な性質

【対象年次:中学三年~】

みなさんこんにちは!
中高生にも分かる数学のお時間です。

今回は昔の数学者たちを苦しめた「無限」のお話になります。

突然ですが皆さんは「無限」は実数だと思いますか?
実数な気がするという人もそうでない人も、今回はそのことについて考えながら記事を読んでいただけると嬉しい限りです。

さて、「無限」という概念はそれを学んでいない人や、まだ習いたての人にもある程度理解しやすい概念な気がしますよね。
微分積分という分野を語るうえで外すことのできない「無限」の概念…
何回か使っていると友達かのように親しみがわいてきて、大して難しい扱いを考えなくなることも…
実際「ここを無限大に飛ばすと…」なんて軽い感じで説明したりできます。

…でも待ってください。
本当は「無限」という概念はそこまで簡単なものではないのです!
ここからは僕が高校生の時に疑問に思った無限の扱いと「無限」が持つ厄介な性質について紹介していきたいと思います。

まず「無限」を考える上でとても重要になってくるのが、その大きさの比較ですよね。
実は無限にも大きい、小さいを比べる術があります。
詳しくは高校数学で学ぶことになりますが、まだ習っていない方にもわかるように頑張って説明します!
(極限記号limは使いませんのでご安心ください)

さて早速ですが、無限大に関して次のことがいえます。

x→∞(xが限りなく大きいとき) x^{2}はxよりも大きな無限大である

xが無限に大きなとき、x=∞ではなくx→∞と書くことも覚えておいてください。

ではなぜこのようなことが言えるのでしょうか?
その理由は両者を割り算すると、

\frac{x^{2}}{x}=x→∞

となり、その値は無限大になるので分子の方が強い(≒大きな無限大)ということが分かります。
逆に

\frac{x}{x^{2}}=\frac{1}{x}→0

とすると、0に近づくので分子の方が弱い(≒小さな無限大)ということも分かります。
(\frac{1}{x}はxが限りなく大きい、すなわち無限大のとき0に近づきますね!)

これは「オーダー」といい、
割り算をすることにより無限大の大きさを比べることができるのです。

では次のような無限大の大小はどのように考えればいいでしょうか?

x→∞(xが限りなく大きいとき) xと2xはどちらの方が大きな無限大か

これはオーダーをとると、
\frac{2x}{x}=2という値に落ち着きます。
んー、やっぱりxより2xの方が無限として大きいんじゃない?
「 ∞ より 2∞ の方が2倍だから大きそう!」
という意見が出てきそうですが、ここが無限の落とし穴なのです…

実はこの2つの無限、大きさは同じと判断されるのです。
「マジ?!」って思いますよね(笑)僕も昔はそう思いました。
少し無限の厄介さが分かってもらえましたか?

ではこの現象を考えるために違う命題を考えてみましょう。

自然数」という数は無限個あり、
その中に含まれる「偶数」という数ももちろん無限個あります。
では自然数の個数を仮想的にN (この数は無限大)としましょう。
そしてこちらも無限大ではありますが偶数の個数も仮想的にEとしましょう。
ではこのとき、N,Eの大小関係はどうなるでしょうか?

本当に、普通に考えると偶数は自然数の中に含まれているので、
奇数の個数分自然数より偶数の方が少ない
すなわち
 E < N
と考えてしまうかもしれません。
しかしこれも答えは「NO」です。

無限大の大小を比較するときには有限の数の常識を引き合いに出してはいけないのです。
だとしたら、どうやって比べたらいいのか。
その答えを与えるのが「一対一対応」というものです。

昔の数学者は無限大の大小を比較するための「一対一対応」という方法をとりました。
具体的に自然数と偶数の話を用いてその方法を説明すると、

ある自然数に対してそれに対応する偶数を探します。
例えば1という自然数に対して2という偶数、2という自然数に対して4という偶数、…
という具合に自然数という世界のある要素と偶数という世界のある要素を結び付けてやるわけです。
そうすると、どんな自然数に対しても必ず1つの偶数が見つかり、そして偶数の取りこぼしが一つもない。
すなわち自然数と偶数が「一対一対応」しているわけです。

1↔2
2↔4
3↔6
…

そしてこのように一対一対応を作れるのであれば、自然数の個数と偶数の個数は等しいとみなせるわけです。
すなわち E < Nではなく、E=Nが正しいということになります。
これを応用すると自然数と3の倍数の個数、自然数と4の倍数の個数なども等しくなることが分かるでしょう。
また、奇数に関しても

1↔1
2↔3
3↔5
…

という風にn番目の自然数とn番目の奇数が「一対一対応」しているので、
自然数と奇数の個数も等しくなります。

当たり前なことではありますが、
(自然数の世界)=(偶数の世界)+(奇数の世界)
となり、自然数の世界は偶数と奇数の世界で構成されます。
これを個数の話で置き換えると、
(自然数の個数)=(偶数の個数)+(奇数の個数)
となるはずですが、これらすべての個数はすべて無限大でさらに等しく、

∞=∞+∞=2∞

という結果が得られるわけです。
かなり横暴な話に聞こえますよね。しかし、これは真実なのです…
これが悪夢ならどんなによかったか…

同様の議論で
∞=2∞=3∞=4∞=…
ということが言えます。
これは、
(自然数の世界)=(3で割って1余る数の世界)+(3で割って2余る数の世界)+(3の倍数の世界)
すなわち∞=∞+∞+∞=3∞
(自然数の世界)=(4で割って1余る数の世界)+(4で割って2余る数の世界)+(4で割って3余る数の世界)+(4の倍数の世界)
すなわち∞=∞+∞+∞+∞=4∞
ということを考えればわかりますよね!

そして以上を踏まえて次のことが言えます。

無限大の数を有限倍してもそれは互いに大きさが等しい

正直ヤバいですよねw常軌を逸してますよねえ~
だってこれを認めたら∞=100∞=1000∞みたいな感じになるんですから。
しかし、兎にも角にもこれは数学的に正しいとされることだからウダウダ言っても仕方ありません。
ここからは この無限の性質を認めることにより生じうる無限の扱いにくさを考えていきます。

高校生のときの僕はこう考えました。

「∞も2∞も等しいんだよなあ…
だとしたら2つの直線y=xとy=2xの交点て原点以外に無限遠点の座標(∞,∞)もあるんじゃないか…?」

これは非常に恐ろしい考えですよね。
2つの直線y=xy=2xx座標が大きくなればなるほど遠ざかっていきます。
なのに∞=2∞を認めると、x=∞のとき2直線のy座標が等しくなります。
明らかに交わってないのに、ですよ?

方程式で考えても、
x=2xの解がx=0の他にx=∞が存在していることになり、事態の異常性が理解できます。

この「無限」の異様な性質を考えると、無限は実数ではないと結論づけていいような気がします。

では単なる感想ではなく、数学的に無限は実数に含まれるのかどうか、という話ですが
その答えは「含まれない場合もあるし、含まれる場合もある」ということらしいです。

なんだか煮え切らない答えですね。
実際には「通常の意味における実数には無限は含まれない」というのが普通らしいですが、
「拡張実数」という世界では通常の意味の実数に「正の無限大∞」と「負の無限大-∞」が加えられるらしいのです。

まあ、なにはともあれ「無限」の扱いには注意してください、ということですね!
あまり適当に扱っているといつか痛い目見るかもしれないよ…ということです!

「中高生にも分かる数学」では数学が苦手な人にも非常に分かりやすい記事を心がけています。
他にもいくつか記事があるので、ご覧いただけると嬉しいです!
では、また他の記事でお会いしましょう!

iの平方根 √iは複素数?|虚数,複素数の話

【対象年次:高校二年~】

みなさんこんにちは!
中高生にも分かる数学のお時間です。

今回は虚数,複素数のお話になります。
パッと言われてこの2つについて説明できますか??
もしできなければ、まずは復習がてら虚数,複素数とはどんなものだったか見ていきましょう!
(分かる人は読み飛ばしちゃってOKです!)

虚数単位iとは以下のような定義がされています。

虚数単位iは2乗すると-1になる数で\sqrt{-1}と等しい

これは高校二年で習いますね。
どんな実数も2乗するとプラスになるはずなので、2乗するとマイナスになる数は実数ではない…
だからこれを「虚数」として定めたのでした。
一般的に「虚数」というと、このiが含まれた数のことをいいます。
ちなみに中学三年で学ぶ2次方程式の解の公式からも、この虚数が現れるときがあります。

 x=\frac{-b±\sqrt{b^{2}-4ac}}{2a}の√の中身
b^{2}-4acがマイナスになるとき解が虚数になるのでした。

では、一旦話を戻しましょう。
さらに、この虚数単位iを用いると複素数というものが定義できるのでした。

a,bを実数として、複素数a+biが定義できる

このa+bib=0のときiが消えるので「実数」、逆にb\neq0のときiが含まれるので「虚数」になります。
すなわち「複素数」とは「実数」と「虚数」を合わせたものだと言うことができます。

(複素数の世界)=(実数の世界)+(虚数の世界)

これが複素数の原型であり、このa+biの形で表すことのできない数は複素数ではないということになります。

ではここで虚数単位i平方根を考えてみましょう。
安直に考えれば、そのときその数は

\sqrt{i}

と書かれることになります。

あれ?でもこれ複素数a+biの形で表されていませんよね?
まさか、これは複素数には当てはまらない概念なのでは!?超越虚数だ!!!

…なんて考えていた時期が僕にもありました。
メチャクチャイタい奴ですねw
超越虚数ってなんだよ、中二病かよって感じですね(笑)

結論から述べると\sqrt{i}複素数です。
実際には約束事を決めて\sqrt{i}の意味を考えると複素数の形で表すことができるのです!
順を追って説明していきましょう。

まず\sqrt{i}の意味から考えてみましょう。
これを言葉に直すと2乗してiになる数ということです。
そんな数は複素数の世界にあるのでしょうか?

では\sqrt{i}複素数であると仮定して計算してみます。
このとき、

\sqrt{i}=a+bi(a,bは実数)

と表されることになります。
ではここでこの両辺を2乗してみましょうか

\sqrt{i}^{2}=(a+bi)^{2}
i=a^{2}+(2ab)i+(bi)^{2}
i=a^{2}+(2ab)i-b^{2}
i=(a^{2}-b^{2})+(2ab)i

となりますね!
ではここで両辺の実部(iがない部分)と虚部(iがついてる部分)を比べてみましょう。

左辺は言い換えれば0+1iということなので、
(左辺の実部)=(右辺の実部)(左辺の虚部)=(右辺の虚部)で式を立ててみると…

0=a^{2}-b^{2}
1=2ab

という式が完成します。
これを頑張って解いてみましょう! まず2つ目の式から。この両辺を2乗すると、

1=4a^{2}b^{2}

となりますね。
そして1つ目の式を移項すると出てくる

a^{2}=b^{2}

という式を代入してbを消去すると、

1=4a^{2}b^{2}
1=4a^{2}×a^{2}
1=4a^{4}
a^{4}=\frac{1}{4}
a^{2}=±\frac{1}{2}

ここで、aが実数ということを考えると
a^{2}=-\frac{1}{2}はあり得ないことが分かるので(実数は2乗してマイナスならないんでしたよね!)

a^{2}=\frac{1}{2}

ということは、さらにこの式の平方根をとって

a=±\frac{1}{\sqrt{2}}

となります!
あとはa^{2}=\frac{1}{2}なのでこれをa^{2}=b^{2}に代入すれば、

b^{2}=\frac{1}{2}

すなわちbaと同じく、

a=±\frac{1}{\sqrt{2}}

となりましたね。

ここまでの結果をまとめると、
i平方根\sqrt{i}=a+bi(a,bは実数)とすれば、そのa,bの値は

a=b=\frac{1}{\sqrt{2}}またはa=b=-\frac{1}{\sqrt{2}}

となり、ここからi平方根は2つあり、その値は

 \frac{1}{\sqrt{2}}+\frac{1}{\sqrt{2}}i,-\frac{1}{\sqrt{2}}-\frac{1}{\sqrt{2}}i

となることが判明しました!

実際に2乗してみても、
(\frac{1}{\sqrt{2}}+\frac{1}{\sqrt{2}}i)^{2}=(\frac{1}{\sqrt{2}})^{2}+2\frac{1}{\sqrt{2}}\frac{1}{\sqrt{2}}i+(\frac{1}{\sqrt{2}}i)^{2}=i
となります。(マイナスの方は自分で計算してみてね)

ということはi平方根は2つあり、
\sqrt{i}=\frac{1}{\sqrt{2}}+\frac{1}{\sqrt{2}}i
-\sqrt{i}=-\frac{1}{\sqrt{2}}-\frac{1}{\sqrt{2}}i
という複素数で表されることが分かりますね!

結果としてi平方根\sqrt{i}は超越虚数なんかでは決してなく、しっかりと複素数の形で表すことができるということになります。
ちなみにiの立方根(3乗するとiになる数)^3\sqrt{i}もしっかりと複素数の形で表すことができて、

 -i,\frac{\sqrt{3}}{2}+\frac{1}{2}i,-\frac{\sqrt{3}}{2}+\frac{1}{2}i

の3つあることが知られてます。
これも今回の求め方と同じように、

^3\sqrt{i}=a+bi(a,bは実数)として、その両辺を3乗することで

^3\sqrt{i}^{3}=(a+bi)^{3}
i=a^{3}+(3a^{2}b)i-3ab^{2}+(-b^{3})i
i=(a^{3}-3ab^{2})+(3a^{2}b-b^{3})i

の実部、虚部を比べて式を作っていけばできます!(かなり面倒臭いですが…)

さて今回はここまでとなります。
すこしでも虚数,複素数について理解が深まっていただけたら嬉しいです!

「中高生にも分かる数学」では数学が苦手な人にも非常に分かりやすい記事を心がけています。
他にもいくつか記事があるので、ご覧いただけると嬉しいです!
では、また他の記事でお会いしましょう!